ファクタリングの分割払い!!
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金を得る資金調達方法です。
日本でもここ数年で大きく浸透したため、現在では個人事業主や中小企業を含め、多くの会社が活用しています。
しかし、ファクタリングを行ったとしても、「手数料が高額」「そもそも資金繰りが悪い」ということが原因となり、ファクタリング会社への支払いが困難になってしまうケースが多々あります。
実際にそのような状況に遭遇し、「分割払い」や「踏み倒し」を考えた経営者も多いのではないでしょうか?
ファクタリングは、売掛債権さえあれば簡単に現金が手に入りますが、お金をしっかりと返済できないと、会社に大きなダメージを負ってしまう可能性もあるため注意が必要です。
そこでこの記事では、ファクタリングの分割払いや踏み倒しはできるのか、また返済できない時の対応などの情報を徹底解説していきます。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類の契約システムがあり、それぞれには以下のような特徴があります。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、「ファクタリング利用者」と「ファクタリング会社」の2社間で契約を締結していきます。
また、取引の流れは以下の通りです。
2社間ファクタリングの取引の流れ
1.ファクタリング会社にファクタリングを申し込み、審査を行う
↓↓
2.審査に通過したら売掛債権を売却し、ファクタリング会社から手数料を差し引いた金額の入金を受ける
↓↓
3.支払期日に売掛先から入金を受けたら、そのお金をそのままファクタリング会社へ送金する(契約の終了)
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、「ファクタリング利用者」と「ファクタリング会社」「売掛先会社」の3社で契約を締結していきます。
また、取引の流れは以下の通りです。
3社間ファクタリングの取引の流れ
1.ファクタリング会社にファクタリングを申し込み、審査を行う
↓↓
2.ファクタリング利用者とファクタリング会社、売掛先会社の3社でファクタリング契約を締結する
↓↓
3.ファクタリング会社に売掛債権の請求金額を通知すると、ファクタリング会社と売掛先会社で請求金額の確認が行われる
↓↓
4.ファクタリング会社からファクタリング利用者へ、売掛債権の譲渡代金が振り込まれる(この時点で売掛債権は、ファクタリング会社に移行する)
↓↓
5.支払期日に、売掛先会社からファクタリング会社へ売掛金が振り込まれる(契約の終了)
返済が必要なのは2社間ファクタリングのみ
ファクタリングを行う上で、返済が必要となるのは「2社間ファクタリング」のみとなっています。
3社間ファクタリングは、そもそも債権譲渡通知を行った上で売掛先会社からの回収はファクタリング会社が行うので、返済の必要はありません。
しかし、2社間ファクタリングの場合は、売掛先会社へ債権譲渡通知を行うことなくファクタリング契約を結ぶため、売掛金がどうしてもファクタリング利用者の手元を一度介すこととなるのです。
勿論、売掛先会社から振り込まれる売掛金をそのままファクタリング会社へ送金すれば、何も問題なくファクタリング契約は終了することができます。
ですが、ほとんどのケースでは資金繰りに窮してしまったことが原因でファクタリングを利用するのであり、ファクタリングを活用したからといって簡単に資金繰りが改善されるわけではありません。
よって、本来ならばファクタリング会社へ送金すべき売掛金を、使い込んでしまうケースも決して珍しくはないのです。
売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡せない場合
売掛先から回収した売掛金を、なぜファクタリング会社へ引き渡せなくなってしまうのか?
それには主に以下のような理由が挙げられます。
売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡せない理由
流用(横領)してしまう
会社には様々な支払いがあります。従業員の給与や仕入費用、家賃や光熱費、借入金の返済など様々です。
前述の通り、ファクタリングを利用する企業の多くは資金繰りに窮しています。
そのような企業がファクタリングにて一時現金を得たとしても、すぐに次に支払いが来てしまいます。
そのため、ファクタリングにて現金を手にし、その後本来ならばファクタリング会社へ送金すべき売掛金を、他の支払に流用(横領)してしまうというケースは大変多くあるのです。
売掛先からの支払いが遅れる
ときには、売掛先からの支払そのものが遅れてしまい、ファクタリング会社へ送金できないケースもあります。
また、仮に売掛先からの支払いが遅れてファクタリング会社へその事実を伝えたとしても、すぐには納得しません。
ファクタリング会社からすれば、真っ先にファクタリング利用者の横領や流用を疑います。
さらに、場合によっては、売掛先へ債権譲渡通知を送付されてしまう可能性もあるため注意が必要です。
手数料が高い
ファクタリングを利用した場合、当然ですが、その売却した売掛債権分を満額手に入れることができるわけではありません。
あくまで現金化されるのは、手数料を差し引かれた金額です。
通常、ファクタリングの手数料は「10%~20%程度」が相場であるため、入金されるのは残りの「80%~90%ほど」の金額になります。
たとえば、1,000万円の売掛債権をファクタリングしたと仮定した場合、以下のような金額が入金されます。
- 売掛債権額:1,000万円
- 手数料(20%):200万円
- 諸費用:5万円
- 実際に入金される金額:1,000万円-(200万円+5万円)=795万円
ファクタリング会社によって多少前後しますが、1,000万円の売掛債権をファクタリングしたとしても、実際に入金されるのは795万円程度となるのです。
しかし、ここで勘違いしていけないのが、ファクタリング会社への返済額です。
手数料などが引かれて入金額は目減りしますが、上記の例で言えば、返済額はあくまで売掛債権の金額である1,000万円となります。
入金額と実際に返済しなくてはいけない金額の差が大きく、結局は資金繰りが改善しない、結果的に売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡せないというケースも珍しくありません。
ファクタリングの分割払いは可能か?
本来ならばファクタリング会社に支払うべき売掛金を使い込んでしまった場合、まず考えるのは「支払の遅延」でしょう。
しかし、ファクタリングの契約書にはしっかりと返済日が明記されているため、基本的に支払の遅延は困難なものと考えておいたほうがいいです。
また、「売掛先からの入金が遅れている」との嘘が通ったとしても、返済遅延の猶予は1ヶ月程度が限度となります。
なぜならば、いきなり支払いが一ヶ月以上も遅れるということはビジネスシーンにおいて、普通に考えてありえないからです。
では、支払の遅延が難しければ「分割払い」はどうでしょうか?どのような形にしても、支払するのであれば問題ないように感じます。
ですが、残念ながらファクタリングは分割払いも基本的には認められていません。
なぜならば、ファクタリングとはあくまで売掛金の売買(譲渡)であり、借入ではないからです。
仮に分割払いを認めてしまうと、金利が発生したことと同じになってしまうため、ファクタリング会社側が貸金業法に抵触してしまうリスクが出てきてしまいます。
ご存知の通り、ファクタリングの手数料は非常に高く、10%から20%以上になることも珍しくありません。
ファクタリングに明確な規定はないため、このような手数料率も認められていますが(勿論グレーゾーンではあります)、これを年利(12ヵ月換算)で計算していくと、貸金業法の上限金利に引っかかる可能性が非常に高くなっています。
分割払いを認めるということは、ファクタリング会社にとっても大きなリスクを背負うことになるため、一括返済を要求してくるのです。
分割払いを認める業者には要注意
返済に窮している際に万が一ファクタリング会社から分割払いを認められた場合、心境的には「助かった」と思うかもしれません。
しかし、前述の通り、分割払いを認めるということは、ファクタリング会社にとっても大きなリスクを背負うこととなります。
そのため、通常ならば考えられないことなのです。
むしろ、分割払いを認めるような業者は、最初からルールを守っていないヤミ金などの違法業者である可能性があるため、注意が必要となります。
また、違法業者や悪徳業者を避けるためにも、支払う必要のない金利や代金の支払いなどが契約書に盛り込まれていないか、しっかりと確認することを推奨いたします。
現金に色はないため同額を渡せば問題ない
2社間ファクタリングを締結する場合、ファクタリング会社が確実に売掛金を回収するため、通常ならばファクタリング利用者と「業務委託契約」を結ぶのが一般的です。
業務委託とは、ファクタリング利用者が売掛先から入金を受けたら、ファクタリング会社へ送金する業務を委託することであり、もし売掛先から入金があったにもかかわらずファクタリング会社へ送金しなかった場合には、この契約項目により債務不履行と見なされてしまいます。
ただし、あくまで単なる債務不履行にすぎないため、横領にはなりません。また、結局のところ、現金に色はないため、最終的に同額を渡せば問題はないのです。
しかし、ファクタリング会社からすれば、どうにか売掛金のお金を回収するために損害賠償請求や債権譲渡通知の送付など、あの手この手と手段を選ばず躍起に回収に走ります。
利用者側としても、損害賠償請求や債権譲渡通知の送付をされたら非常に困るでしょうし、かといってすぐに支払をするのも難しいかと思われます。
そこでおすすめとなるのが、専門家である弁護士のサポートを受けることです。
弁護士のサポートを受けることで、ファクタリング会社との分割払いの交渉や、和解交渉を任せることが可能となります。
ファクタリング会社の変更も視野に入れる
資金繰りがいよいよ悪化してくると、ファクタリング会社への支払が困難となります。そうなる前に、ファクタリング会社の変更も視野に入れましょう。
ファクタリングの手数料は非常に高いです。しかし、業者によっては数%程度安いケースもあります。
また、同じファクタリング会社と長く取引を行っているならば、手数料の値下げ交渉を行うのも一つの手段です。
いずれにしても、ファクタリング会社への支払いが困難となる前に、手数料率の低い業者の変更や弁護士へ相談するなどの対策を取っていきたいところです。
踏み倒すことは可能か?NG!
支払いが困難、かといって分割払いも難しい。
そのような状況では、最終手段として踏み倒しができないかと考える方も多くいらっしゃいます。
確かに、そもそもファクタリングの手数料は非常に高額で、年利に換算すれば貸金業法も真っ青な高利です。
また、本来は貴社の売掛債権なのに、わざわざ入金された売掛金をファクタリング会社へそのまま送金しなければならないという状況に「釈然としない」という気持ちもわかります。
ですが、それでもファクタリング会社への支払を踏み倒すの実質的に不可能なのです。
債権譲渡通知を送られる
ファクタリング会社への支払いができなくなってしまった場合、ファクタリング会社は売掛先へ「債権譲渡通知」を送付します。
債権譲渡通知とは、債権者が別の第三者に変わることを知らせる通知書です。
この場合、売掛債権がファクタリング利用者からファクタリング会社へ移ったことを売掛先へ通知します。
債権譲渡通知を送付されると、当然ですがファクタリングを利用していることが売掛先(取引先)に発覚してしまいます。
その場合、取引先からすれば「ファクタリングを利用しなければならないほど資金繰りが厳しいのか」と懸念することでしょう。
そうなりますと、信用を失い、今後取引を中止されてしまう可能性もあります。
また、取引先は返済先をファクタリング会社へ変更する必要があるため、その点でも迷惑をかけてしまいます。
結局のところ、ファクタリング会社からすれば、ファクタリング利用者から支払を受けることができなくなったとしても、売掛先から返済を受ければ何も問題ないのです。
取引先とトラブルになってしまうリスクを考えれば、ファクタリングの支払を踏み倒すのは不可能と考えていいでしょう。
債権譲渡登記を行っているとより踏み倒しが困難となる
ファクタリングは、売掛債権を売買(譲渡)する資金調達方法です。
しかし、売掛債権とは目に見えない権利であるため、法人でよほどの理由がない限りは、ファクタリングする売掛債権に対し「債権譲渡登記」が行われます。
債権譲渡登記を行うことで、法的にも売掛債権がファクタリング会社のものだと明確にわかるようにするのです。
また、債権譲渡登記を行ったからといって、金融機関からの融資審査に影響が出たり、取引先にファクタリングの利用が発覚したりするするわけではありません。(ただし、登記情報提供サービスからの観覧は可能)
ですが、債権譲渡登記という法的な証拠ができるため、尚更踏み倒しなどは困難となります。
- 債権譲渡通知を送られないように配慮しながら分割払いの交渉をする必要がある!
本来ならファクタリング会社へ支払うべき売掛金を使い込み、かといって分割払いや踏み倒しを行なえば債権譲渡通知を送付されてしまいます。
債権譲渡通知書は、ただの郵便ですので、投函すれば翌日には取引先に届いてしまいますので、止めることができる人はいません。
このような状況に陥ってしまうと、もはや素人だけでは、とてもではないですが対応できなくなってしまいます。
しかし、かといって全てを投げ出す必要もありません。まずは一旦冷静になり、専門家である弁護士へ相談することを検討してみましょう。
また、ファクタリング会社との交渉は弁護士が表立って行ってくれるため、ファクタリング利用者としても気が楽でしょう。
時間的余裕があれば、弁護士からのサポートを仰ぎ、ファクタリングからの脱却を目指すことができるかもしれません。
そのため、手遅れになる前に、できるだけ早く相談することが肝要となります。
まとめ
ファクタリングの利用者は、ここ数年で飛躍的に増加しました。
しかし、メリットばかりが先行してしまい、そのシステムの内容をあまり把握せず利用してしまう方も多いです。
ファクタリングを活用する方は、資金繰りが厳しく「少しでも早く現金が必要」という状況にある可能性が高いため、当然と言えば当然です。
ですが、その後支払いが不可能となるリスクを考えた場合、その際のデメリット等もしっかりと考慮した上で活用すべきでしょう。
また、2社間ファクタリングの返済は「分割払い」や「踏み倒し」を行うことが困難であり、柔軟な対応を取ることができません。
返済が不可能とわかれば、ファクタリング会社はすぐにでも債権譲渡通知を取引先へ送付してしまいます。
債権譲渡通知書は、ただの郵便ですので、投函すれば翌日には取引先に届いてしまいますので、止めることができる人はいません。
そのような事態を避けるためにも、返済が難しいと判断した時点で、すぐにでも専門家である弁護士からのサポートを仰ぎ、ファクタリングからの脱却を目指す必要があります。