コロナショックで新型ヤミ金(ファクタリング)が横行している状況!

コロナショックで新型ヤミ金(ファクタリング)が横行している状況!

事業者の方、ビジネスに取り組んでおられる方々は今般の新型コロナショックによる打撃を受けて事業の存続に支障をきたしておられるかもしれません。

東京をはじめ複数の都府県では国の緊急事態宣言も発布され、各方面で行動自粛要請が強化されています。

住民の活動が制限されることで直接に売り上げが減少したり、あるいは間接的でも収入に影響が出る企業がかなり多いことでしょう。

今般の影響による急激な経済の停滞は個別企業の資金体力を短期間に悪化させ、資金繰りに窮する企業が続出しています。

そして、これを機に「ファクタリング」という手法で資金提供をうたう悪質な金融業者によるトラブルが増加する危険性が危惧されています。

本章では今般のコロナショックダメージを受けた中小事業者の現状と、これに狙いを定める悪質なファクタリング業者の危険性について詳しく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

新型コロナの影響を受けた中小事業者の現場の声

資金体力のある比較的な大きな企業でも事業撤退や倒産するところが多数出ている現状で、中小企業の現場の声は悲鳴に近いものがあります。

特に観光産業、ホテル業、飲食関係、イベント関連は真っ先に打撃を受け、政府も緊急の支援策を打ち出しました。

信用保証協会を通して緊急の融資を行うことが表明されたものの、この実効性はあまり期待できません。

というのも、支援策を扱う窓口にはものすごい量の申し込みや相談が殺到しており、とても迅速な対応が望めないからです。

一説には6万件もの応募が殺到しているとされ、相談した事業者からは、「自分の案件が処理されるのはいつになるのか分からないと担当者に言われた」という話もよく聞きます。

今経営者の目の前にあるのは、「週末に支払うお金」や「明日の仕入れに必要な資金」の需要であって、融資実行までに悠長に待っていられる余裕がありません。

昔は、ノンバンクで扱う商工ローンも柔軟性が高く、迅速に借りられるところが多くありましたが、国の施策上の理由で貸金ビジネスのうま味が減ったことから、柔軟性のある事業性商工ローンの存在は影が薄くなっています。

そんな中で、迅速性、柔軟性に富む資金調達法として近年認知度が高まっているのが「ファクタリング」という手法です。

ファクタリングとはどういうものか?

資金調達法として一般的に用いられるのは融資、つまり借り入れですが、これは金銭消費貸借という法的性質をもつものです。

ファクタリングは貸金ではなく、法的には債権の譲渡取引の性質を持ちます。

国内の多くの事業者は掛け取引をしますが、その際売り手側には売掛債権が発生します。

これは「将来支払いを受けられる(お金をもらえる)権利」であり、財産的価値を持つものです。

一定の手数料を支払った上でこの売掛債権を譲渡し、目下必要な現金を手元に用意できるのがファクタリングです。

売掛債権を買い取るファクタリング業者は、買取金として代金を支払いますが、買い取った売掛債権の期日になれば支払いを受けることができます。

つまり、先払いで資金提供した上で、後払いによって手数料分の差額を儲けとしてビジネスを成り立たせていることになります。

このファクタリングの実際の取引では、「二社間取引」と「三社間取引」の二種類の取引形態があります。

二社間取引では、売掛債権の譲渡会社とファクタリング業者だけで取引を進め、売掛先の会社は取引関係に入ってきません。

売掛債権を譲渡することは信用に響くことがあるので、取引先に秘密で進めたいという要望があれば二社間取引がとられることがあります。

この場合、売掛債権の支払いは期日に債権譲渡会社に入金されることになるので、当該社を経由してファクタリング業者に支払われます。

※(お金の流れ)売掛先→債権譲渡会社→ファクタリング業者

もう一つの三社間取引は、売掛先の会社の合意を取り、債権譲渡会社、売掛先、ファクタリング業者の三社が契約当事者となるものです。

売掛先の合意が取れていることから秘密性はありませんが、三社間取引による場合は売掛金が直接売掛先からファクタリング業者に支払われるので(債権譲渡会社を経由せず売掛先→ファクタリング業者となる)、資金回収の安全性が高い分、二社間取引よりも手数料がかなり安くなります。

・債権の譲渡取引であること

・二社間取引と三社間取引という取引形態があること

ファクタリングには以上のような特徴があることを押さえておきましょう。

ファクタリングは元々海外で発祥した手法ですが、これ自体は違法性のあるものではなく、日本国内でも近年認知度が高まってきている資金調達方法です。

悪質性のないまっとうなファクタリング業者もいますが、債権の譲渡取引であることから貸金業法による規制を受けないことに目を付けて、悪質な業者も相当数参入していることが以前から問題になっていました。

さらに、今般のコロナショックで市場の資金需要が増すことから、弱い立場に立つ企業に付け込んで悪質な事業者が被害を拡大させやすい環境になっており、今後かなりの金融被害が急増することが危惧されています。

悪質ファクタリング業者の逮捕例と背景

ここで一つ悪質ファクタリング業者の逮捕例を挙げて、その背景に潜む事情を考察します。

昨年の9月のことですが、この段階ですでにファクタリング業界には悪質業者が入り込み、方々で企業を食い物にしていました。

東京都内のコンサルタント会社の代表を含む11人が、千葉、岩手の両県警による合同捜査本部により摘発され、逮捕されています。

この事案はファクタリングに名を借りた実質的な貸し付けで、法定金利をはるかに超える金利相当の利息を受け取ったということが理由でした。

ファクタリングは貸し付けではないので、利息を取るようなことは許されません。

しかし悪質な業者はそんなことはお構いなしに、お金に困った事業者を言いくるめて、場合によっては半ば脅して、様々な名目で金を巻き上げていきます。

この悪質業者は他にも複数の被害企業に対して数十億円を貸し付けて、数億円の利益を得ていたとされています。

他にも同様の性質を持つ悪質業者は数多く入り込んでいるとされていますが、彼らはどこからやってくるのでしょうか?

実は、悪質業者の正体の多くは元闇金業者であるケースが多いのです。

闇金も一時期相当の被害を出し、逆に彼らは相当の利益を得ていました。

しかし闇金融対策法が施行され、個別の裁判でも貸金契約は無効であり被害者に返金義務がないことが確定、さらに不当利得として闇金業者が得た利益の返還義務が生じるなど、闇金業のうま味が減少しました。

さらに、弁護士や警察などが事案に応じて闇金業者が使用する携帯電話や口座などのツールを凍結させることができるようになったことで、彼らは活動しにくくなったのです。

そこで、現状では貸金業法の適用もなく、法規制が及ばないファクタリングに目をつけて、これに参入してきたというわけです。

現状では手数料の上限も法律で決まっていませんから、業者側で任意の手数料額に設定できますし、最初は低い手数料に見せかけて、後になってから様々な言いがかりをつけて「違約金」などの名目で金を巻き上げることもできます。

悪質業者の多くは上述したファクタリング契約のうち「二社間取引」を進めてくることが多いです。

これは「債権譲渡を知られたくない」という、ファクタリング利用者の弱みに付け込むことができるからです。

相手が要求に従わなければ「債権譲渡を取引先や業界の各社に暴露するぞ」などと脅して、相手を従わせることができます。

このように、ファクタリングに名を借りた悪質な金融は「新型ヤミ金」と呼ばれることがあります。

現状でファクタリングの規制はどうなっているのか?

実に信じられないことに、現状ではファクタリングについて法律による直接の規制が全くされていないのが現状です。

個別ケースで、悪質性が高く刑事事件で扱えるものは先述の例のように逮捕事案に発展することもありますが、ファクタリングは建前上は債権の譲渡取引であることが規制のネックになっています。

貸し付けでなければ貸金業法の適用を受けず、従って業者には登録義務なども存在しません。

同様の理由で、貸し付けで言うところの金利にあたる手数料についても、上限などのルールはありません。

つまり、完全に需要と供給のパワーバランスだけで成り立っているということです。

当然、「お金がないと困る」側が圧倒的に弱い立場になりますから、悪質ファクタリング業者に食い物にされるのは必然です。

契約自由の原則の下で取引がなされることになりますから、「御社の信用が低いので」などの理由をつけて高い手数料を取ることもできます。

お金に困っている会社は多くの場合急ぎの事情を抱えている点も弱点です。

最初は普通の手数料を示しておき、契約の最終段階までは問題なさそうに振舞います。

そしていざ契約の段階になったら「審査の結果、御社の信用力では手数料が上がります」などと言い始めます。

利用者側は「明日までに金が必要なのに」というような事情を抱えていますから、今さら他社と折衝している余裕ありません。

そして泣く泣く悪条件での契約を飲まされることになります。

また二社間契約ではファクタリング業者と別途「債権回収業務委託契約」を結ばされることが多いです。

これは、売掛債権の支払期限になった際に、ファクタリング業者に代わりに債権譲渡会社側が売掛金の回収務を負う契約です。

予定通り入金されれば良いのですが、何らかの事情で売掛先からの入金が遅延するような事態になれば、「債権回収業務委託契約」の義務違反として違約金を取られることもあります。

契約自由の原則の元ではこうしたことも普通に行われてしまいます。

そしてもう一つ危惧する点があります。

今般、長らく手付かずだった民法の大改正が行われ、その中で債権譲渡禁止特約が付された債権についても、譲渡された場合はその譲渡契約自体は有効であると原則論が改定されました。

これによって、債権譲渡禁止特約が実質上機能しなくなり、悪質ファクタリング業者に売られることで被害が多発することも危惧されています。

どうしてかというと、仮に譲渡が禁止されている売掛債権であった場合、三社間取引では当然売掛先の合意を取ることができませんから、必然的に二社間取引しか手段がなくなります。

そのため「債権譲渡を取引先に知られたくない」という債権譲渡会社の思惑と、「二社間取引に持ち込みたい」という悪質ファクタリング業者の思惑が合致してしまいます。

これでは自ら泥沼に入ることを選択するようなものです。

以上から、市場の自浄作用は期待できないので、何らかの規制が必要なことが分かります。

政治は現状をどう見ているのか

法人向けのビジネスファクタリングについては、まっとうな事業者が行う分には問題ありません。

市場のお金の流動性を高め、経済活性に一役買っていることもあり、一律に「ファクタリングは全て悪だ」と言えないことが、迅速な規制強化を妨げているようです。

流動債権を用いた資金調達ができるというベネフィットを維持しつつ、悪質な業者や弱い者いじめになるような取引をなくしていくにはどうするべきか、考えていかなくてはなりません。

この点、法人向けビジネスファクタリングについて、政府、与党内でも問題視されています。

第198回参議院予算委員会では、平木大作議員による質問として、二社間ファクタリングの手数料は金利に換算すると大変な高負担となっており、実質的に債権担保貸付と同視できるのに、規制する法律がないことから悪質な取引が行われていることや、反社会的勢力の参入が野放しの状態であること、そのため事業者登録の義務付けを検討するべきではないか?と問われています。

これに対して、麻生太郎財務大臣は、「これまでも個別事例で捜査当局と連携し摘発等の対処を行っており、これからも続けていくが、ファクタリング事業者一般の登録義務については、悪質事例の実態把握を強化し、必要に応じて検討していく」との趣旨で答弁しています。

悪質なファクタリングについては今後取り締まりが強まっていくと予想されますが、実効性のある規制強化には時間がかかるので、当面は国民一般が自主防衛していくしかありません。

資金調達を考える事業者は各自で安全な資金調達を考える必要があるので、これについて次の項で見ていきます。

当面の自主防衛策はどうする?

まずファクタリングの利用そのものについて見ていきます。

まっとうなファクタリングビジネスを行う事業者は、通常三社間取引をメインに扱う姿勢のところが多いです。

三社間取引の場合、手数料相場は1%~3%程度とされており、ファクタリング業者側の儲けとしては少なくなりますが、売掛先の合意が取れており取引の安全性が高いので、通常は三社間取引を用いることが多いです。

特別な事情が確認できる場合は個別ケースでニ社間取引が検討されることもありますが、そうではなく二社間取引メインで話を持ち掛けてくるファクタリング業者には注意した方が良いでしょう。

二社間取引は手続き上の手間が少なく、手数料は10%~30%程度の相場とされており、業者側の儲けが大きく、債権譲渡企業の弱みを握ることができるので、いざとなればそこに付け込むことができます。

困ったことに、利用者側も「売掛先や業界の知り合いに知られたくない」という思惑が働くため二社間取引に魅力を感じてしまいますが、大きなリスクをはらむため二社間取引によるファクタリングは避けるのが無難です。

問題はファクタリング業者自体の信頼性ですが、これは一見して把握するのは非常に困難です。

HPなどから悪質性を見抜くのは難しいことが多いので、ファクタリングを利用する場合は、確実に信頼できる人物からの紹介や推薦があるところを検討する必要があるでしょう。

ただしそれも確実ではないので、できればファクタリングに依存しない資金調達を考えましょう。

公的融資や銀行融資、あるいはノンバンク系のビジネスローンなど従来からある方法で事業運営ができるよう、中長期的な見通しを立てるのが最も大切なことです。

ただ、今回はコロナショックという突然の事態でしたから、予想外に事業計画が激変してしまい、目下必要な資金が足りなくなる事例が多発しています。

迅速性を考えてどうしてもファクタリングを利用しなければならない時は、努めて三社間取引を検討するようにし、どうしても二社間取引とする場合は、付き合うファクタリング業者の信頼性、安全性を自己責任で確保するしかありません。

もし闇金的な体質の悪質事業者につかまってしまった場合は、すぐに金融分野に詳しい弁護士に相談しましょう。

まとめ

今回は、コロナショックの激震が続く中で国内事業者の弱みに付け込む悪質なファクタリング業者について取り上げて見てきました。

ファクタリングという言葉を初めて聞いたという人も中にはいるかもしれませんが、もし資金調達手段として利用するのであれば、業者の安全性の見極めが非常に重要になります。

有効な規制策が打ち出されるまでには時間がかかりますから、当面は自主防衛が求められるということは覚えておいてください。

資金難に陥る企業が増えることで、悪質業者が接触してくる可能性も高まります。

当面は資金調達に関して相当の警戒感を持って臨み、もし素性の良くない相手と付き合ってしまうようなことがあれば、早めに弁護士に相談することを考えてください。