ファクタリング会社へ偽造請求書や通帳を出してしまった場合の対応方法!
企業間取引における売掛債権をファクタリング業者に売却することで、必要な資金を調達できるのがファクタリングという手法です。
債権は物品のようにはっきりと目に見えないため、譲渡取引においては売掛債権が本当に存在するのか、色々な資料を確認して判断することになります。
ファクタリング業者にとってもリスクのある取引ですから、基本的にはしっかりと確認して進めるのが普通ですが、取引の態様上どうしても抜け穴が出てくるので、これを利用しようと思えば債権譲渡会社側も資料の偽造等を行うことができてしまいます。
本章では、このような資料の偽造等をしてしまった場合、債権譲渡会社がどのような責任を負うことになるのか、どのように対応すればよいのかを見ていきます。
資料の偽造をファクタリング業者は見抜けない?
売掛先の承諾のもとで行われる三社間ファクタリングの場合は、その売掛先の企業がグルになっているような場合を除いて、安全性はほぼ担保されています。
しかし、二社間ファクタリングで債権譲渡会社が提出する資料は、確信的な意図を持てばいくらでも改ざんが可能です。
一般的にファクタリング取引では、売掛債権があることを示すために、取引の契約書や請求書、入金履歴が分かる通帳のコピーなどの提出を求められます。
これらの資料はやろうと思えば改ざんがいくらでもできてしまうので、一見してばれてしまうような下手な改ざんをしない限り、ファクタリングの申し込み時点では業者側の担当者を出し抜くことが比較的簡単にできてしまうのです。
三社間ファクタリングであれば売掛先の企業も資料をチェックしますから、取引金額が異なるなどの異常はすぐにばれてしまいますが、二社間取引ではそれができません。
ただし、仮に債権価額を水増ししてファクタリング取引に成功したとしても、売掛金入金後にファクタリング業者に返金する資金が足りませんから、結局は債権譲渡会社自身が追い詰められることになります。
他に入金のあてがあって、そちらを期待して、とりあえずファクタリングでは嘘をついてでも多くの資金が欲しいと考えてしまうと、上記のような行為を考えてしまう可能性があります。
後でつじつまを合わせてファクタリング取引を無事切り抜けられれば一応はセーフですが、もしトラブルになった場合には刑事責任を問われる可能性もあるので、絶対に偽造等は行わないようにしてください。
ファクタリング会社へ偽造請求書や通帳を出すことは詐欺になる?
契約書や請求書など、売掛債権があることを示す資料や通帳の入金欄などを偽造して提出することは、刑法上の詐欺罪に問われる可能性のある行為です。
刑法上の詐欺罪は、他人を欺く行為によって相手を錯誤に陥らせ、これによって財物を交付させる行為ですから、説明資料を偽造してファクタリング業者を錯誤に陥らせ、買取金を交付させる行為がまさに該当してきます。
資料の偽造はやろうと思えば割と簡単にできてしまいますが、その結果から生じる責任は非常に重いものになります。
また詐欺以外にも罪に問われる可能性があるので、次の項で見ていきます。
水増しや架空請求ではどんな罪に問われる?
売掛債権があるように見せるために架空の取引をでっちあげたり、実際の取引で作られた書類等を改ざんする行為は、私文書の偽造・変造にあたりそれぞれ罪に問われる可能性があります。
どのような行為がどのような違法行為となるのか、ここで詳しく見ていきましょう。
一般の商取引などで生じる契約書や領収書など、公文書以外の私文書についての偽造・変造行為は以下のように分類することができます。
有印私文書偽造
作成する権限のない者が、他人の名前を勝手に使用したり、印章を勝手に作るなどして署名押印し、書類を偽造する行為が有印私文書偽造です。
例えばファクタリングをするために、存在しない取引をでっちあげて、取引先の会社名の入ったハンコを勝手に作って押印し、取引を示す書類を作る行為などが該当します。
有印私文書変造
実際にあった取引から生じた契約書など、相手方の署名押印がある私文書について、権限がない者が勝手に変更を加える行為です。
例えば、ファクタリング取引でより多くの金額で買い取ってもらうために、売掛債権の価額を不正に増額しようと契約書の数字を書き換えるような行為が該当します。
無印私文書偽造
作成権限のない者が、署名や押印のない書類を偽造する行為が無印私文書偽造にあたります。
例えば、売掛債権があることを説明する資料として、建設請負工事の施工図面や指示書などで相手方の署名押印がない書類を偽造する行為が該当します。
無印私文書変造
こちらは、実際に存在する無印私文書に、権限のない者が勝手に変更を加える行為です。
実際の取引で生じた無印私文書に対して、ファクタリング取引を有利にするために何らかの変更を加える行為が該当します。
存在しないはずの書類を勝手に偽造したり、既存取引から生じた書類を変造する行為、そしてその書類を取引に使用することは、刑法上の罪に問われる可能性が出てくるので、絶対に行わないようにしてください。
売掛債権の二重譲渡はどうなる?
売掛債権は目に見える物品と違って、二重譲渡に気づかれにくい性質があります。
二重譲渡を防ぐ仕組みとして債権譲渡登記がありますが、ケースによっては当該登記をせずにファクタリング取引が進められることもあります。
二社間取引で進める場合で、条件交渉の上で債権譲渡登記なしで進める場合は外部に対して債権譲渡の証明ができませんから、二重譲渡も可能になってきます。
例えば債権譲渡会社が最初にファクタリング業者Aに売掛債権を譲渡したとして、その後同債権をB社にも売って二倍の資金を獲得したいと思ったとき、説明資料さえ用意できれば相手を信用させることができるので、比較的簡単です。
この場合、先にA社に売却しており本来存在しないはずの債権を勝手に作り上げてB社に売ろうとしたわけですから、この点で私文書の偽造としてとらえることができます。
また相手を欺き、錯誤に陥らせて買取金を交付させることから、詐欺にも該当してきます。
売掛金の使い込みはどうなる?
ファクタリングトラブルでは債権譲渡会社による資金の使い込みも起きやすくなります。
三社間ファクタリングで取引を行う場合は、売掛先企業から直接ファクタリング業者に売掛金が支払われるので問題は起きませんが、二社間ファクタリング取引の場合は、売掛金が一旦債権譲渡会社に入金され、そこからファクタリング業者に支払いがなされます。
そのため、何らかの事情でファクタリング業者への支払いに回すべき資金を、債権譲渡会社が使い込んでしまう機会が生まれてしまいます。
売掛金の入金は銀行口座になされることが多いですが、手元にある現金ではないため、故意ではなくともタイミング的にそのまま自社の支払いに回されてしまうこともあります。
また意図的に使い込みがなされることもあり、長期に支払いを待ってもらっている買掛先への支払いを優先してしまったり、闇金など強引な取り立てをする相手への支払いを優先してしまうことは考えられます。
しかし売掛債権をファクタリング業者に売却している以上、その売掛金は債権譲渡会社のものではなくファクタリング業者のものになっています。
これを使い込んでしまうことは、横領として刑事責任を問われる事態になりかねません。
資料の偽造や変造もそうですが、使い込みも起きやすい事案ですので注意が必要です。
ファクタリング会社へ偽造請求書や通帳を出してしまった場合の対応方法
それでは、書類の偽造などを行ってしまった場合にはどうすれば良いのか、この項で見ていきます。
本来存在しない架空取引をでっちあげて資料を作成したり、既存取引の資料の数字をごまかすなどの行為をしてファクタリング取引を進めてしまった場合、まずは支払いが問題なく確実にできるかどうか見通しを立ててみましょう。
架空取引をでっちあげて書類を偽造している場合、売掛先は存在しませんから実際の入金はないことになります。
従ってファクタリング業者への支払資金は別途用意するしかありません。
他の売掛先から入金されるお金を充てたり、自社の固有の財産を使ってファクタリング業者への支払いができそうであれば、ひとまずは偽造がばれてトラブルになることは避けられます。
書類を変造し数字を書き換えるなどして水増しを行った場合は、売掛先から入金される金額ではファクタリング業者への支払いに足りませんが、この場合も他の資金を充当して支払いができれば、問題の発覚を避けることができます。
問題が発覚してしまうと、刑事事件に発展する可能性があり相当大事になってしまうので、もしファクタリング業者への支払資金が足りない場合は、なんとしてでも用立てる必要があります。
闇金は絶対に利用してはいけませんが、ノンバンクのビジネスローンなどで借りられそうなところがあれば検討を要します。
また自社の在庫の一掃や資産の売却などで資金を作ることも並行して、何とかして現金を用立てましょう。
どうしてもうまくいかず万事休すとなりそうなときは、すぐに弁護士に相談して、事の事情を正直に話し、今後の立ち振る舞いをどうするか計画を立てていく必要があります。
ファクタリングを含めて、企業法務や金融トラブルに強い弁護士を探して相談するようにしてください。
二重譲渡や使い込みをしてしまった場合の対応方法
二重譲渡をしてしまった場合、後に売却したファクタリング業者への支払資金が枯渇することになります。
また使い込みをした場合は当初の取引相手となる業者を相手に資金枯渇がおきます。
どちらの場合も、別途支払資金を用立てることができれば、事件の発覚を避けることは可能でしょう。
前項でお話ししたように、何とかしてお金を用意する方法を考え抜くことになります。
どちらかというと、使い込みよりも二重譲渡の方が確信的な背信行為と捉えられ、相手をだます気持ちがはっきりしているので、もしばれたらファクタリング業者が激怒することは容易に想像できます。
債権譲渡通知の発送や損害賠償請求はもちろん、刑事告訴も考えてくるでしょうから、もし支払資金を用意できないときは、覚悟しておかなければなりません。
使い込みも二重譲渡も、もし資金の用立てが難しいことが分かったら、その時点ですぐに弁護士に相談しなければなりません。
特に二重譲渡は騙す意図がはっきりしているわけですから、相手に合わせる顔がないでしょう。
弁護士がいれば代わりに相手と交渉してくれますから、心理的な負担を避けることもできます。
二重譲渡も使い込みも、やもすると支払資金の調達のために、別のファクタリング業者に新たな売掛債権を譲渡して現金を用意しようと考えることがあります。
計画的に問題なければ構いませんが、ファクタリングは元々手数料が非常に高いので、何度も連続で利用するものではありません。
ほとんどのケースでは、連続利用することでさらにキャッシュフローが悪化し、自転車操業に陥ることになります。
会社を守りたいのであれば、独断で考えずに弁護士の知恵を借りて対応策を練るようにしましょう。
まとめ
本章では、ファクタリングを利用した会社が資料の偽造や変造など、背信的な行使をしてしまった場合にどうなってしまうのか、どう対処したらよいのかについて見てきました。
資料の偽造変造、使い込みや二重譲渡など背信的行為はいくつか種類がありますが、どの態様の場合もトラブルになるのは基本的に二社間ファクタリングで取引を進める場合です。
ファクタリング業者としては自社の儲けが確保されればいいわけですので、もし背信的行為をしたとしても、支払いを問題なく済ませることができれば表面上はトラブルの発生には至らないかもしれません。
ただし、相当リスクの高い行為ですから、背信的行為は絶対にするべきではありません。
すでにしてしまっている場合で、支払いを無事に切り抜けられるか分からない場合は、今すぐに弁護士に相談する必要があります。