判例3件紹介!ファクタリング契約が違法かどうかの注意点(貸金業法・利息制限法違反や過払金請求も!)!

判例3件紹介!ファクタリング契約が違法かどうかの注意点(貸金業法・利息制限法違反や過払金請求も!)!

ファクタリングは無登録貸金業として違法であり、過払い金返還請求が可能なのでしょうか?

昨今、ファクタリングの訴訟案件は増え続け、裁判例が蓄積されておりますので、それを踏まえて、ファクタリングはどのような場合に無登録貸金業として違法となり、過払い金返還請求可能なのか、どのような場合は、無登録貸金業として違法に該当せず、過払い金返還請求が不可能なのか判断できます。

今回は、ファクタリングに関する判例を見て解説したいと思います。

大阪地方裁判所平成26年(ワ)第11716号について

現在多くのファクタリング訴訟において引用されている平成29年3月3日大阪地方裁判所平成26年(ワ)第11716号は、

「金銭消費貸借契約であれば、貸主は、利息制限法所定の制限利率の限度でしか利息を収受することができず、債権の売買契約ということでこれを上回る利益を上げることが正当化されるとすれば、買主が、売買対象の債権につきある程度回収のリスクを負うなど、相応の理由があってしかるべきであるが、上記認定事実によれば、被告は、債権回収のリスクをほとんど負っていない。

また、被告が上げた利益は、専ら原告との間で繰り返し授受された金員の差額によるものであり、債権を売買の対象としたとはいえ、その代金を一部しか支払わないで済むとか、債権のうち一定の金額分のみをあえて売買の対象とするなど、債権の額面とは無関係に金員の授受がなされていた。

加えて、原告が買戻しを行わなかった場合には、譲渡債権の全額が回収できたときに初めて債権譲渡代金全額の支払を受けるとか、債権の一定金額分のみの譲渡のために各債務者に債権譲渡通知が発送されてしまうといった不利益を受けるから、本件取引において原告は、買戻しを行わざるを得ない立場にあったものといえる。そうすると、本件取引では、金銭消費貸借契約の要素たる返還合意があったものと同視することができる。

被告は、本件取引は、原告の信用力でなく、あくまで債権の属性に着眼して代金額を設定しているから、金銭消費貸借契約でなく、債権の売買契約としての実質を有していたと主張する。

しかし、原告に当該債権の代理受領権限があった本件取引においては、前記のような取引の実態も踏まえると、債権の回収リスクは、原告の信用リスクと同じことであるから、被告の上記主張は、これまでの裁判所の判断を左右しない。

以上によれば、本件取引は、金銭消費貸借契約に準じるものというべきであるから、利息制限法1条の類推適用を受けるものと解するのが相当である。

したがって、被告の原告に対する売買代金等の支払を貸付けと捉え、原告の被告に対する買戻代金の支払を貸付けに対する弁済と捉えて、同条所定の制限利率を超えて支払われた部分を元本に充当して計算した結果、過払金が発生した場合には、不当利得としてその返還を求めることができるというべきである。」と判示し,利息制限法の類推適用を認めました。

ようするに、平成29年3月3日大阪地方裁判所平成26年(ワ)第11716号は、下記①〜③を認定し、ファクタリング取引の実態を踏まえ、当該ファクタリング取引を金銭消費貸借契約に準じた契約であると判断しました。

①     ファクタリング会社は、債権の買い取りであるから、金銭消費貸借の場合を超えるリスクを負っていなければいけないところ、ファクタリング手数料に相当する債権回収のリスクを負っていないこと。

②    ファクタリング会社は、対象債権の一部のみを買い取るなど、対象債権の額面とは無関係に、資金の供与を行っていること。

③     ファクタリング利用者は、債権譲渡通知が発送されてしまうのを避けるため対象債権を買い戻さざるを得ず、資金の返還合意があったものと同視することができること。

④ その結果、要するに、ファクタリング会社の債権の回収リスクは、ファクタリング利用者の信用リスクと同じと評価されること。

①について

ファクタリング訴訟において特に争いになる基準は①です。この点は、多くのファクタリング裁判例において議論されている点ですので、最重要事項だと思われます。

「当該譲渡対象債権の回収リスク」とは、第三債務者が破産するなどして、当該譲渡対象債権に係る金銭を回収できないリスク(以下「第三債務者の信用リスク」と言います)と考えることができます。

例えば、第三債務者の信用不安について、ファクタリング契約時のみでなく、契約後においても債務者が保証するというような契約内容や、第三債務者が破綻した場合に債務者が当該債権を買い戻すというような契約内容は、債権者が第三債務者の信用リスクを負っていない、と裁判所に判断される可能性があります。

②について

次に、②ですが、対象債権の一部のみを買い取るなど、対象債権の額面とは無関係の金額で買い取られている場合は、そのファクタリングは無登録貸金業として違法となり、過払い金返還請求が可能となります。

③について

最後に③ですが、①と重なる点もありますが、債権者の中には、債権の買戻特約や、売掛金回収にかかる業務委託契約において連帯保証や債権譲渡登記を設定する債権者もいます。これはつまり法律上、債務者が必ず債権者に対して何らかの金銭補填をしなければならないということになり、実質的には、金銭の返還合意があるということになります。

そのため、回収業務の業務委託契約を含むファクタリング契約において、債権の買戻特約や連帯保証特約が付いている場合は、無登録貸金業として違法となり、過払い金返還請求が可能となります。

大阪地方裁判所平成26年(ワ)第11716号の態度

ファクタリングが無登録貸金業として違法となり、過払い金返還請求が可能となるか否かに関する注意点の概要は以上のとおりです。ファクタリング訴訟は、最高裁判所の判例がありませんので、一律の判断基準はありませんが、裁判所は、当該契約がどれだけ金銭消費貸借契約に近づいているか、という点を大まかな視点として、判断しているものと思われます。

その他の裁判例

なお、上記裁判例の他にも、ファクタリング訴訟において、裁判所が示した判断基準を引用いたします。ご参考にしてください。引用のファクタリング訴訟においても、当該契約書が、金銭消費貸借契約に近づいているか、という視点で判断を下していると思われます。

・東京地方裁判所(ファクタリング会社側勝訴)

上記各契約書からは、原告と被告●●との間で、売買の目的とされる売掛債権の回収不能の危険を原告が負担する旨の合意がされたとは認められないし、他にこれを認めるに足りる証拠もない。また、被告●●が、上記各契約書を取り交わすに際し、原告の与信調査をしたこともうかがわれない。

・東京地方裁判所(ファクタリング会社側勝訴)

原告は、ファクタリングも、貸金業法上の「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。)」(以下「貸付け等」という。)に該当するため、貸金業法上の登録のない被告がした本件債権譲渡は,同法42条1項類推により無効である旨主張する。

そこで検討するに、ファクタリングは、企業に対して金融を供与するという、点では貸付け等と共通するものの、金融を供与した相手からの返済を前提とする貸付け等とは異なり、あくまでも売買として債権を買い取るものである。

特に、本件債権譲渡は、ファクタリングの中でも、譲渡人に買戻義務のない(ノンリコース)ものであるところ、このようなノンリコースのファクタリングは、譲受人において債権回収リスクを負担し、譲渡人に遡求することを予定していないものであるから、貸金業法が予定している貸付け等とはその性質を異にするものというべきである。

また、手形割引は、手形の売買という形を取りながらも、譲渡人に遡求義務がある上、銀行取引約定書において買戻し義務が定められ、実質的には手形担保貸付けの役割を果たしていることから、貸金業法上の貸付等に該当すると解されるところ、これと、上記性質を有するファクタリングとを同等に考えることも困難である。

以上によれば、本件債権譲渡は、貸金業法上の貸付け等には該当しないというべきであるから、原告の上記主張は採用できない。

本件において被告が、本件運送代金債権に譲潅禁止特約が付されていたことを知っていたと認めるに足りる証拠はない。そこで,上記譲渡禁止特約の存在を知らなかったことについて被告に重過失があったか否かについて検

討するに、前記認定事実及び弁論の全趣旨によると、被告は、本件債権譲渡を受けるに当たり、譲渡人である坂口運輸から、本件契約書、本件確認書、本件同意書をそれぞれ受領し、本件運送代金債権に譲渡禁止特約が付されていないかについて慎重に確認しており、また、被告が、本件債権譲渡の時点で、坂口運輸が譲渡禁止特約について虚偽の事実を述べていると疑うべき事情を認識していたと認めるに足りる証拠はない。

以上の事情に照らすと、被告は、本件運送代金債権の譲渡禁止特約の存在について必要な調査を尽くしており、同特約の存在を知らなかったことについて重過失があったとは認められないというべきである。

裁判所の一般的態度

このように裁判所がファクタリングを違法と判断した事例は限られていますが、そうであれば、ファクタリング会社に対して過払い金返還請求は困難なのかというとそうではありません。

確かに、事業者向けファクタリングについて、金融庁や裁判所は態度を明確にしていません。

ただ、裁判所は、判決を示して態度を明確にすることはあまり多くはなく、裁判のほとんどは和解により終了しています。

裁判所は裁判ごとに妥当な解決を図るべく、いろいろな要件をたてつつ、適切そうな和解を図っているように見えます。

やはり、判決を出してしまうと、サラ金の過払い金訴訟に関する記憶がまだある中で、世間に対するインパクトが大きすぎると思っているのかもしれません。

この点、当事務所においては、ファクタリングに関する裁判を多く経験しており、その中で、実際、裁判所が、ファクタリングについても、消費者金融と同様の過払い金と同じように考え、バランスをとって、実質的に解決することが多くなっていますので、裁判所は、態度を明確にしていないものの、ファクタリングの過払い金問題を、実質的に解決しようとする姿勢なのだと思われますので、悲観する必要はありません。

すなわち、裁判所としては、実質的に、過払い金が存在するものと観念し、ファクタリング会社に対して返済すべき借入金を、その過払い金と相殺することによって減額し、適切な解決を図るということを行っている状態です。