ファクタリングと会社再生!
ファクタリングとは
ファクタリングとは、典型的には、事業会社が、取引先に対する売掛債権を、ファクタリング会社に売却することにより、売掛債権の支払日よりも早く現金化し、事業会社の資金繰りを改善しようとする金融取引です。
ファクタリング会社とは
ファクタリングは、主としてリース会社が、事業会社に対する資金繰り支援として行っていましたが、平成18年の貸金規制法の強化に伴い、事業継続が困難となる貸金業者が続出し、貸金業者の廃業が頻発しましたが、もともと違法な貸金業者だった悪質・違法な業者も、同様に、貸金業を廃業し、数年前から、続々と、ファクタリング業を開業して、ファクタリングの取り扱いを強化しています。
経済産業省が、ベンチャー企業や創業企業の新しい資金調達方法として、ファクタリングを推奨していることもあり、経済産業省の想定とは異なり、違法なヤミ金(闇金)業者などが、続々と、ファクタリング業に参入しているのです。
昨年までは、ファクタリング会社は、主として、東京の業者ばかりでしたが、昨年あたりから、大阪に進出しまた地元の業者も伸びてきており、近時では、福岡に進出しまた地元の業者も伸びてきており、それに伴って、ファクタリング被害も全国に拡大しつつあります。
ファクタリング業界最大手は、数年前まで、貸出金額は、数億円程度だったようですが、現在では百数十億円に急成長しているようです。
当事務所においても、ファクタリング被害のご相談が、数年前は、1日数件のペースであり、その後、ファクタリング被害に対応できる弁護士がやや増加したことから、問い合わせが減ったところですが、現在においても、概ね1日1件以上のペースで問い合わせが来ているところです。
二者間ファクタリングとは
ファクタリングの中でも、大きく問題になっているのは、二者間ファクタリングと言われるものであり、実態は、貸金と同じであり、その結果、違法なヤミ金(闇金)業者などが、従前どおり、違法なヤミ金(闇金)と同じスタイルで運営しているものです。
ファクタリング会社の間で主流となっている二者間ファクタリングは、売掛債権担保融資(貸付)と外観上区別がつきません。
すなわち、通常のファクタリングである三者間ファクタリングでは、事業会社は、取引先に対して有している売掛債権を、ファクタリング会社に売却して、売却代金を獲得し資金調達しますが、その際に、事業会社から取引先に対して、売掛債権を債権譲渡した旨の通知を行うか承諾を取得することとなります。
他方、近時、ファクタリング会社の間で主流となっている二者間ファクタリングでは、事業会社は、取引先に対して有している売掛債権を、ファクタリング会社に売却し、売却代金を獲得し資金調達しますが、事業会社から取引先に対して、債権譲渡通知などは一切行いません。
すなわち、事業会社としては、ファクタリング会社のような怪しい業者から資金を調達していることを取引先に知られると、信用不安の問題などが生ずることを恐れて、取引先に対して債権譲渡通知などを一切行わない資金調達方法を選択するのです。
その結果、取引先は、売掛債権が債権譲渡されたことは全く知らないまま、事業会社に対して売掛債権を支払うこととなります。事業会社はファクタリング会社から売掛債権の回収代行業務の委任を受ける形にするのです。そして、事業会社は回収代行した売掛金を、ファクタリング会社に引き渡すのです。
事業会社が、回収代行した売掛金を、ファクタリング会社に引き渡すことを怠った場合は、ファクタリング会社は、事業会社に対して、違法なヤミ金(闇金)同然の激しい取り立て行為を行うのです。また、もちろん、それと同時に、取引先に対しても、事業会社を代理して、債権譲渡通知を行い、直接、激しい取り立て行為を行うのです。
この二者間ファクタリングですが、全体として、結局、取引先に対する売掛債権を債権譲渡したということはほとんどフェークであり、実態としては、事業会社がファクタリング会社から資金を調達し、期日になったら、事業会社がファクタリング会社に対して資金を返済する、という取引であり、外観上は、事業会社がファクタリング会社から、資金を借り入れたのと同じなのです。
であるにも係わらず、ファクタリングには、貸金業法などの規制が存在しないため、現在、そのような悪質なファクタリング会社が野放図に増加し、ファクタリング被害が拡大しているのが現在の状態です。
ファクタリングの貸金との違いは、ほとんど、売掛債権がファクタリング会社に売却(担保提供?)されている点のみです。
ファクタリング問題とは
このようなファクタリングですが、事業会社、特に、建設業者、運送業者、卸売業者、広告業者などの間で、悪質ファクタリング会社がはびこり、社会問題となりつつあります。
ファクタリング問題は、数年前に一時的に非常に多くなりましたが、近時の景気の悪化に伴い、再度、ファクタリング問題が社会問題化しつつあるように思われます。
では、ファクタリング問題とはどのようなものでしょうか。
ファクタリング手数料(金利)が異常に高い!
まず、ファクタリング会社は、取引先に対する売掛債権を適正価格で買い取ってくれるという取引ではありません。事業会社がファクタリング会社から資金調達しようとしているということは、かなり資金繰りに窮しているからであり、ファクタリング会社としては、事業会社の足元を見ますので、事業会社は、非常に不利な条件で資金を調達せざるを得ないのです。
ですので、ファクタリング会社は、ファクタリング手数料を取ると称して、20%から30%ディスカウントして、売掛債権を買い取るのです。売掛債権は、通常、月末締め・翌月末払いまたはそれに類似する支払いサイクルとなりますので、ファクタリング会社が供給した資金は、1ヶ月後には回収することができることが一般的です。
要するに、ファクタリング会社からの資金の調達は、月利に相当するものが20%から30%となっているのです。当事務所の経験則では、ファクタリング会社はこれくらいの暴利をむさぼっているのです。事業会社としては、ファクタリング事務手数料ですと言われてしまうと、月利に相当するものが20%から30%などとは思いませんので、事業会社の多くは、まさかそのようなコストの高い資金を調達しているとは思わずにファクタリング取引に入ってしまいます。
これだけ資金調達コストが高いと、一回使用したら、それを完済することはできなくなりますので、ファクタリングを永久に使用し続けざるを得なくなってしまいます。まさに無限地獄にはまり込んでしまうのです。
月利20%から30%などという粗利を取れている会社はほとんどいないと思います。資金繰りに窮してファクタリング会社から資金を調達するような事業者が、そこまでの粗利の厚いビジネスをしているとは思えません。
このようなコストの高い資金を調達した会社は、早晩、資金繰り困難に陥り、経営破綻してしまいます。ファクタリング会社から資金を調達し始めたら、なかなか抜けられないのです。
ファクタリングには貸金規制法の適用がない!
しかし、ファクタリングは、売掛債権の売買であり、貸金ではないため、貸金規制法の適用はないと言われています。利息制限法の適用もないので、月利20%から30%となっていても、利息制限法違反にもならないのです。
ただ、前述のとおり、ファクタリングは、その実態は、売掛債権担保融資(貸付)とほとんど同じなのです。
この点、過去及び現在において、ファクタリングは貸金規制法に違反しており無効であり不法原因給付であり返還を要しない、法定利息を超過した部分は違法金利であるとして過払い金請求をする、といった裁判が多く行われています。
この点、平成29年3月3日の大阪地裁の判決では、ファクタリングと貸金の違いは、取引の実態に即して、事業会社に対象売掛債権の買戻義務があると評価できるかどうかによるとするものと判断されました。
なお、事業会社は、取引先に債権譲渡通知を行われてしまうと取引停止になってしまいますので、実質的に買戻義務があると思うのですが、同判決によると、それだけでは不足であり、事業会社としては、ファクタリング会社から、対象売掛債権の額のほんの一部しか資金調達できておらず、事業会社がファクタリング会社に対して回収金を引き渡すことができず、ファクタリング会社から取引先に債権譲渡通知を行う結果、ファクタリング会社から調達した資金の額に比べて著しく大きな額の売掛債権を取られてしまうため、事業会社が否応なく買い戻さざるを得ないような場合に、事業会社に対象売掛債権の買戻義務があると評価できるとされているようです。
しかし、ファクタリング会社は、もとより、取引先のみから資金を回収するというよりは、事業会社からも資金を回収するし、取引先からも資金を回収するということを想定しており、取引先が倒産したとしても、外観上は、取引先が倒産し事業会社が売掛債権を回収できなかった場合も、事業会社が回収金を流用して引き渡さなかった場合と同じですので、ファクタリング会社としては、事業会社の回収業務委託の債務不履行であるとして、事業会社に対して、引き続き、資金の返済を要求しますので、平成29年3月3日の大阪地裁の判決は、ややファクタリング会社の実態が見えていないように思われます。
なお、裁判所においては、実際は、もうお少し柔軟に判断しているようであり、和解勧告の中で、実質的に、過払い金の返還を認めたのと同様の和解が成立しているケースも多く存在するようです。
ファクタリング会社の違法なヤミ金(闇金)同然の激しい取り立て行為!
上記でも述べましたが、事業会社が、取引先から回収代行した売掛金を、ファクタリング会社に引き渡すことを怠った場合は、ファクタリング会社は、事業会社に対して、違法なヤミ金(闇金)同然の激しい取り立て行為を行いますし、同時に、取引先に対しても、事業会社を代理して、債権譲渡通知を行い、直接、激しい取り立て行為を行うのです。
すなわち、ファクタリング会社が取引先に対して債権譲渡通知書を送るのです。事業会社ではありません。ファクタリング会社は、そのようなことが起きるのを予測してあらかじめファクタリング取引を開始する前に、事業会社に債権譲渡通知書の内容証明原稿に実印を押印させ、かつ印鑑証明書を何通も入手しているのです。
また、ファクタリング会社は、事業会社が資金の返済を送れると、一日に50回電話をしたり、社長の自宅の前に深夜まで張り込んだり、事業会社のオフィスに押し掛け何時間も帰らなかったり、会社の事務所に社長を呼び出し、深夜前返さなかったり、公正証書に無理やり押印させたり、恫喝したり、社長の奥さんの実家に押し掛けたりします。
また、ファクタリング会社の中は、債権譲渡通知書を、対象売掛債権の第三債務者である取引先以外の不特定多数の一般取引先に対しても、送りつけるところもいます。そのようなことをされると事業会社は一気に信用不安で倒産してしまいます。
やはりそうならないように、ここは弁護士が間に入って適切に対応するしかないかと思います。
債権譲渡通知書という伝家の宝刀により強く返済強制が行われる!
事業会社は、ファクタリング会社から取引先に対して、債権譲渡通知書を送付されてしまうことを異常に恐れています。
すなわち、取引先に対して債権譲渡通知書を送付されてしまうと、事業会社が、ファクタリング会社から資金を調達していたことが露呈してしまい、ファクタリング会社のような怪しい業者であり、かつ相当資金繰りに窮した会社でないと資金を借りないような業者から資金を調達していることが露呈してしまうのです。
また、取引先によっては、上場会社を含むしっかりした会社であり、ファクタリング会社の多くは反社会的勢力とつながりがあると認識しており、事業会社がファクタリング会社と付き合っていると、コンプライアンス上の問題から取引が停止になってしまうようです。
すなわち、要するに、事業会社は、ファクタリング会社が、売掛先に対して、債権譲渡通知書を送付すると、信用問題になり取引を停止されてしまうため、貸金に比べて、事業会社に対する、資金返済強制力が著しく強いのです。
ですので、事業会社がファクタリングを返済できなくなった場合、ファクタリング会社は取引先に対して、債権譲渡通知書を送りますので、その事業会社は取引停止・経営破綻になってしまうのです。
本来、銀行からの借り入れもリスケができますし、ノンバンクや貸金業者からの借り入れも交渉によりリスケや分割払いが可能となるにもかかわらず、ファクタリング会社からの資金の調達は、取引先に対して債権譲渡通知が行われてしまうため、期日に必ず返済する必要が生じてしまうのです。資金の返済に柔軟性を持たせることができないのです。
なお、当事務所の経験則では、ファクタリング会社としても、事業会社を破綻させるのが目的でもありませんし、事業会社から無事資金を回収できれば問題ないわけですので、ファクタリング会社との交渉により、ファクタリングの資金の返還のリスケや分割払いが可能となる事例も存在します。
ファクタリング利用者の問題も!
ファクタリングを利用する事業者も問題を引き起こしてしまうことがあります。
事業会社が、詐欺や横領をしてしまうことがあるのです。
すなわち、事業会社によっては、架空債権をファクタリング会社に売却して資金を調達してしまう事例があります。さすがにこれは「詐欺」ですので、刑事事件になってしまいます。また、事業会社が取引先から売掛債権を回収し、それをファクタリング会社に引き渡さずに、他に流用してしまうと「横領」になり、また、刑事事件になってしまいます。
ただ、ファクタリングにおいて、刑事事件が実際に立件されたケースというのは非常に少ないように感じられます。
企業再建コンサルタントの使命とは
前述のとおり、ファクタリング問題は、近時の景気の悪化に伴い、再度、社会問題化しつつあるように思われます。
破産や民事再生を申し立てる会社のかなり多くの会社において、債権者にファクタリング会社が名前を連ねているという話もあります。
近時における企業再建事例においては、ほとんどで、ファクタリング問題が出てくるのです。中小企業であれば、特に、その通りです。
ファクタリング会社から資金を調達してしまった以上、その事業会社は無傷ではいられません。しかし、事業会社の事業を生き延びさせることは、企業再建コンサルタントであれば難しくはないのではないでしょうか。
前述のとおり、ファクタリング会社の違法行為に対しては、当事務所においては、対応方法が確立してきております。
しかし、弁護士は、そのような状況に陥ってしまった事業会社の経営を再建する方法を知りません。このような会社は、ファクタリングに手を出しさえしなければ、そこそこの利益を出すことができていた会社です。
もともとはファクタリング会社の月利20%から30%を負担することができる事業会社なのです。第二会社方式で事業再建ができるでしょうか。多くの弁護士は、ファクタリング会社から借りてしまった事業会社には破産を進めるようです。何とか破産せずに、社長が社会復帰できる方法はないでしょうか。
これからの景気減退局面において、頻発するファクタリング事例において、企業再建コンサルタントの奮闘が期待されます。