ファクタリング業者から過払い金を取り戻そう?

ファクタリング業者から過払い金を取り戻そう?

ファクタリング業者から過払い金を取り戻そう!本記事では、給与ファクタリングのみならず、事業者ファクタリングについて風向きが変わってきており、過払い金返還請求ができるようになってきていることについて詳述します。ファクタリング業者の多額の手数料を払ってしまい過払い金の返還を請求したい方必読です。

Contents
  1. ファクタリング業者から過払い金を取り戻そう(事業者ファクタリングについても過払い金返還請求は可能か?)
  2. 給与ファクタリングについて過払い金返還請求が可能になった背景は?
  3. 給与ファクタリングについて過払い金返還請求が可能である法理論は?
  4. 事業者ファクタリングも給与ファクタリングと同じ問題がある!
  5. 給与ファクタリングに関する金融庁の見解を解説
  6. 給与ファクタリングに関する近時の判例の傾向を解説
  7. 給与ファクタリング業者に対する集団訴訟の動きが活発化!?
  8. 事業者ファクタリングも規制強化の動きが!?(事業者ファクタリングも給与ファクタリングと同じ?!)
  9. 事業者向けファクタリングについて金融庁や裁判所はどう見ているのか?
  10. 事業者向けファクタリングについての金融庁の過去の見解
  11. 事業者向けファクタリングについての裁判所の過去の見解
    1. ①ファクタリング業者が債権回収リスクを負っているか
    2. ②連帯保証人や担保を求めているか否か
  12. 事業者向けファクタリングについての近時のいろいろな見解
  13. 事業者向けファクタリングについての東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)
  14. 東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)のポイント
  15. 東京弁護士会は債権譲渡通知が不要な場合や回収業務委託契約がある場合も貸金業だとした点が画期的である!
  16. 東京弁護士会は給与ファクタリングのみならず事業者ファクタリングも「偽装ファクタリング」として一括したところも画期的である!
  17. ファクタリングの被害相談は取扱豊富な当事務所まで

ファクタリング業者から過払い金を取り戻そう(事業者ファクタリングについても過払い金返還請求は可能か?)

個人・企業に関わらず、資金繰りの問題や急な現金需要に対するビジネスの類は多くあり、悪い意味で色々と知恵を凝らした悪徳ビジネスも横行しています。

近年問題になっているのが「給与ファクタリング」というもので、個人の現金需要に対し、給料債権の買い取りと称して現金を給付し、給与日に手数料精算としてお金を返還させるものです。

給与ファクタリング業者は「給与債権の売買取引」と言い張りますが、実態は「貸金業」と同じです。

給与ファクタリングについては、これまで野放しだった業界にようやく規制のメスが入ることになりました。

給与ファクタリングは元々事業者向けのビジネスファクタリングが個人向けに派生したものですが、事業者向けファクタリングも実は不良業者が多数活動しており、こちらもかねてから問題を指摘されています。

今般、給与ファクタリング業界に強力なメスが入ったことをきっかけに風向きが変わり、事業者向けファクタリングにも的確な規制を入れる動きが加速しています。

本章では、前半で主に近時の給与ファクタリング業界がどのように様変わりしたのかを取り上げ、その後事業者向けファクタリングの現状と法規制の動きについて解説していきます。

給与ファクタリングについて過払い金返還請求が可能になった背景は?

給与ファクタリングはこれまで、建前上は債権の売買取引であり、貸金業にはあたらないという主張がされてきました。

「会社から給与をもらう権利」を債権と捉え、事業者向けファクタリングでいうところの売掛債権と同視して買取の対象にし、後日利用者に給与が入った時に、手数料精算として支払いを約束させるものです。

あくまで債権の売買契約であって金銭消費貸借契約ではないから、貸金業法の規制対象にはならないという言い分がこれまでなされてきました。

これが後述するように、金融庁が「給与ファクタリングは貸金業にあたる」という公式見解を出したことから様相は一変します。

各地では給与ファクタリング業者に対して過払い金の返還請求が立ち上がり、責任の追及が見られるようになりました。

現状では、給与ファクタリングそのものを直接規制する法律はないのですが、貸金業法の適用を受けるのであれば、こちらの方面から責任追及が可能になります。

給与ファクタリングについて過払い金返還請求が可能である法理論は?

ではなぜ過払い金の返還請求が可能になるのか、その考え方を見ていきます。

給与ファクタリングは、勤め先に知られないようにする名目で、利用者と給与ファクタリング業者の二者間だけで取引を進めます。

会社が支払う給与は、労働基準法のルールがあるため従業員に直接支払う必要があり、給与ファクタリング業者は勤め先の業者に直接支払いを求めることはできません。

そこで、利用者本人に給与債権とやらの回収義務を課し、給与日には確実な支払いを約束させることになるため、勤め先は実質関与せず、利用者が給与ファクタリング業者に対して直接支払いの義務が課されることになります。

お金の流れを見れば、これは実体として貸し付けや融資と何ら構造が変わらないものです。

実質が貸し付けであるということが金融庁の公式見解で出された以上、給与ファクタリング業者の言い分は通らなくなります。

貸付業を営むわけですから、貸金業法の適用を受ける立場になるので、事業を行うには貸金業法に則った登録が必要です。

もちろん登録などしていませんから、彼らは無登録業者ということになります。

無登録で貸金を行うのは闇金と同様です。

無登録での貸金事業には刑事罰の適用もありますが、民事面は利用者の被害を実質的に回復させるための道も開かれます。

無登録業者が行った契約行為は無効であり、無効な契約に基づいて違法業者に支払われた金員は、法律上の原因無く給付されたものですから返還請求の対象になるのです。

このような考え方で、各地で給与ファクタリング業者に対する訴訟が提起されています。

個別のケースにもよりますが、給与ファクタリングの手数料を金利に換算すると年利で120%を超えることもザラとされています。

不当に支払った過払い金を取り戻せるということで、給与ファクタリングの利用者がこぞって弁護士に過払い金の相談を始めています。

事業者ファクタリングも給与ファクタリングと同じ問題がある!

貸金業法違反には刑事罰の適用もあるので、無登録事業者は警察に逮捕されることになります。

ここでは、いくつかファクタリングに名を借りて違法な貸し付けを行った業者の逮捕例を見てみます。

①朝日新聞デジタル2019年9月25日「債権の買い取り装いヤミ金営業容疑 社長ら11人逮捕へ

②日本経済新聞2017/8/30「ファクタリング、ヤミ金が装う 違法貸し付け、大阪などで摘発 法規制求める声

③朝日新聞デジタル2017年2月16日「「レセプト債」販売会社元社長らを逮捕、ファンド規制について
④産経WEST債権買い取り装い高利貸し 大阪府警、東京の2業者8人を逮捕

ここで、皆さんからは「違法なファクタリング営業を行う事業者はどんどん摘発すべき」という意見も出ると思います。

至極もっともなことですが、残念なことに警察による刑事面での積極的な摘発はあまり期待できないのが実情です。

闇金方面もそうですが、警察のマンパワーの問題などもあって、どうしても全国で暗躍する全ての違法業者を一斉に摘発というのは難しいため、必要に応じて民事面から被害者を救済していく必要があります。

金銭被害が起きる事案ではむしろこちらの方が重要で、被った被害をしっかり回復させなければ、いくら事業者が逮捕されても被害の回復はできません。

先にも出ましたが、民事面での被害回復の道を大きく開いたのが、金融庁による見解です。

現状の給与ファクタリングは違法で、貸金業法の適用を受けると判断した経緯や内容を見てみましょう。

給与ファクタリングに関する金融庁の見解を解説

給料ファクタリング業界に激変をもたらしたのが、金融庁の公式見解です。

金融庁は行政機関ですので警察のように個別業者を摘発するなどの行為はできませんが、金融業全般を所管する省庁であり、関係する事業の規制を行い、必要な場合は行政処分を下すことができます。

給与ファクタリングはかねてから評判が悪く問題視されていたのですが、事業者向けのビジネスファクタリングを生業とする事業者は特に、「ファクタリング」のイメージの悪化を心配し強く問題視していました。

そこで、事業者向けファクタリング業者の自主規制団体の性質を持つ「日本ファクタリング業協会」が、給料ファクタリングの違法性を金融庁に問うたのが事の始まりです。

この問い合わせは単なる問い合わせや相談ではなく、「ノンアクションレター」といって、正式な行政手続きの一種です。

国民一般や事業者が行う事業等について違法性が無いかどうかを照会し、これに書面で回答を得ることができます。

さらに行政機関による回答は広く国民に公開されるので、行政庁の公式見解としての性質を持ちます。

金融庁の回答から主な論点を抜き出し、要旨をまとめると以下のようになります。

1、動労基準法の規定により、給与は労働者に直接支払う義務があること

2、上記1により、給与ファクタリング事業者は勤め先に対して債権の回収を行うことはできないこと

3、上記2により、給与ファクタリング業者は労働者(利用者)から直接資金の回収を行うスキームとなっていること

4、上記3にかかるお金の流れは経済的貸し付けと同様のスキームとなり、貸金業法における「手形の割引、売渡譲渡担保その他これらに類する方法」に該当すること

これらの要旨を総合し、給与ファクタリングは貸金業として認定されるということを金融庁が判断したものです。

ということは、無登録で給与ファクタリングを行っている現存の事業者は全て違法業者ということになります。

ノンアクションレターによる回答は、個別業者の違法性をチェックしているわけではありませんが、逆に言えば給与ファクタリング一般について全体に網をかけられる論拠になります。

そのためこの行政判断を足がかかりに、個別の事案における金銭被害を救済しようと全国で弁護士が奮闘しているわけです。

裁判で相手業者の責任を追及する論拠として、上記の金融庁の行政判断を提示し、そこから以下の点を主張していきます。

・金融庁は貸金業法における無登録業者とみなしていること

・無登録で行う業者は刑事罰の対象になり、民事では利用者の契約が無効であること

・無効な契約によって業者に交付された金員は、利用者に返還の義務があること

このような論証によって相手方の責任を追及していくことになります。

被害者は手数料と称して高額の支払いを強要されていますから、これを取り戻す過払い金返還請求訴訟が現在各地で行われています。

なお、金融庁は先の公式見解を公表した後、さらに国民向けに対する注意喚起として「給与ファクタリングは違法な闇金業者なので注意すること」の資料を作成、公開していますので以下もご参照ください。

給与ファクタリングに関する近時の判例の傾向を解説

それでは、これまでになされた給与ファクタリング事案に関する裁判所の判断を見てみましょう。

「ミナミ実業」が無登録業者と認定され、契約無効及び刑事罰の対象となった事案です。

この事案では、無登録営業で給与ファクタリングを行う業者が、利用者が支払いを怠ったため、手数料精算金としての金員給付を求める形で二件の提訴がされたものです。

利用者が業者を訴えたものではなくその逆で、以下の立ち位置になることに留意してください。

原告:給与ファクタリング業者

被:利用者

原告の給与ファクタリング業者は勝てると見込んで清算金の支払いを求めたのでしょうが、これが仇となって自らの悪行が認められてしまった形です。

二件の事案はどちらも同様の性質を持ち、裁判所の判断もほぼ同じです。

判決の要旨をまとめると以下のようになります。

・原告が行っていた給与ファクタリングと称する事業は、貸金業法や出資法にいう「貸し付け」に該当する。

・業として貸し付けを行う以上、原告は貸金業を営む者にあたる

・業としての貸し付け行為において貸金業法の規定をはるかに超える利息を受け取ったものと認められるから、本契約は無効であり、加えて出資法の規定により原告は刑事罰の対象になる。

・契約は無効であるから、被告(利用者)は金銭の支払い義務はない

・給与ファクタリング業者が交付した金員は不法な原因に基づく給付であることから、その点においても、利用者は返還義務を負わない

裁判所は主に以上のような論点から、給与ファクタリングは違法であり、契約者は交付を受けた金銭の返還義務がないことが結論付けられました。

給与ファクタリング業者に対する集団訴訟の動きが活発化!?

前項では給与ファクタリング業者が自らの違法性を認められてしまったもので、利用者が受け取った金員の返還義務がないという結論でした。

では業者側に支払ってしまった手数料についてはどうでしょうか。

この点、今現在進行中の各地の裁判ではもっと踏み込んで、業者側に支払ってしまった手数料等の清算金を取り戻すという姿勢がとられています。

これは従来の闇金に対する姿勢と同じで、交付された元本は返す必要がなく、渡してしまったお金も業者側の不当利得として返還請求を行うものです。

給与ファクタリングにかかる「過払い金返還請求訴訟」と言われているものがこれにあたります。

筆者が記憶に強く残っているのが、今年の初めあたりに「七福神」の運営元である株式会社ZERUTAが被告として訴えられた事案でした。

給与ファクタリングというものが世に浸透し始めたのは2019年頭か、それよりも少し前だったと記憶していますが、「七福神」はその先頭に立って参入し、ネット上で大々的に事業を展開していきます。

そこから、同業他社もこぞって参入し始め、かなりの数の違法業者がひしめく状態になりました。

七福神は業界の中では非常に名前が知れていて、利用者もかなりの数に上ると思われます。

いずれにしても、七福神の運営元である株式会社ZERUTAが被告として訴えられたことを皮切りに、別の利用者も別案件として同社を訴え始めます。

こうなると、七福神以外の給与ファクタリングを利用した人たちも声を上げ始めます。

給与ファクタリングの利用者は全国にいるので、それぞれが弁護士に相談し、複数の訴訟が提起されるようになりました。

この流れは止めることはできず、訴えられれば負けることが分かっているので、業者側はこぞって逃げ腰になります。

名前の知れていた業者は当初は新規のサービス提供を中止し、資金回収に専念することになります。

しかし事業に使っていた口座が凍結されるなどして資金の取り扱いができなくなると、現金書留で郵送するように、などと利用者に指示します。

しかしこうした悪あがきも長くは続きません。

多くの業者は事業継続を放棄し、廃業解散、夜逃げ同然の様相で連絡がつかなくなっていきました。

メジャーな業者はすでに廃業に追い込まれていますが、実はまだほそぼそと事業を継続している給与ファクタリング業者がいることを筆者は知っています。

こうした者たちも、いずれ遠くない日に事業継続ができなくなり撤退していくことになるでしょう。

この業態にもう未来はないのです。

事業者ファクタリングも規制強化の動きが!?(事業者ファクタリングも給与ファクタリングと同じ?!)

これまでは主に給与ファクタリングについて見てきましたが、この業態が違法であることはもはや動かしようがないといって良いでしょう。

ではビジネス面で利用される事業者向けファクタリングは問題ないのかというと、そうではありません。

ビジネスファクタリングも、従来から違法業者の暗躍で被害が多発しており、給与ファクタリングの締め付けが本格的にされるようになったことを契機に、事業者向けファクタリングについても、違法性があるものについてはしっかりと規制をしていこうという機運が高まっています。

ここで「あれ?ビジネスファクタリングは海外でも普通に行われている業態ではないの?」と思われる方もいるでしょう。

全てのファクタリングが違法なわけではなく、確かに適正なファクタリングも存在します。

ファクタリングのロジックには大きく「二社間ファクタリング」と「三社間ファクタリング」がありますが、後者の方は適正に進められる限りにおいて問題の無い取引です。

三社間ファクタリングでは、売掛債権保有企業が売掛先の企業の合意をとり、ファクタリング業者と共に三者合意を形成して臨むスタイルです。

このスタイルであれば違法性のない形になりますが、問題は二社間ファクタリングの方です。

ビジネスにおいては「信用」が非常に重視されるため、売掛債権を譲渡することについて、取引先や業界関係者に知られてしまうと、その後の事業運営において悪い影響が出かねないと考える事業者は多くいます。

そうした場合、売掛先企業には秘密にしたまま、債権保有企業とファクタリング業者だけで取引を進めることもできます。

これが二社間ファクタリングですが、これだと先述の給与ファクタリングと同じで、結局は債権保有(譲渡)企業がファクタリング業者に清算金の支払い義務を負わされる形になり、貸金と同様のロジックになります。

細かい考え方は次項で説明しますが、事業者向けファクタリングも二社間ファクタリングについては違法性を帯びることがあり、これを問題視する傾向が最近強まっているのです。

事業者向けファクタリングについて金融庁や裁判所はどう見ているのか?

では事業者向けのビジネスファクタリングについて、金融庁や裁判所がどのように見ているのか確認していきます。

事業者向けファクタリングについての金融庁の過去の見解

まず金融庁は、元々以下のような行為等は貸金業法に抵触するという見解を示しています。

・ノンリコース(償還請求なし)の契約で、譲渡人に請求する行為

・買戻し特約が付された契約

・回収業務委託契約を締結して、代表者保証、第三者保証を付する契約

・売買債権以外の第三債務者の債権を譲渡担保とする契約

・契約の終了した債権譲渡通知書を返却せず、流用して送付、回収する行為

・債権譲渡通知を留保する契約

・譲受人が債権譲渡通知書(電子内容証明を含む)を作成して送付する行為

・取引に関係のない親族、会社等に架電して請求する行為

・譲渡人を恐喝して、譲渡代金の回収を図る行為

最後の二つはまさに闇金が得意とする回収手段ですが、いずれにしても上記のような行為、契約等はファクタリングではなく貸金業にあたるということで、こうした性質をもつファクタリングであれば、従来から過払い金返還請が可能という見解もありました。

事業者向けファクタリングについての裁判所の過去の見解

また裁判所の見解ですが、これまでは主に以下のような点を考慮して違法性の判断がされてきました。

①ファクタリング業者が債権回収リスクを負っているか

ファクタリング取引では業者側が債権を買い取って買取金を交付しますが、この時点では金銭的な儲けは発生していません。儲けを確保するには売掛先企業が売掛金を約束通りに支払い、この資金を回収する必要があります。もし売掛先企業が倒産するなどして資金回収ができなくなると儲けがなくなってしまい、逆に損失が出ます。そこで、売掛先企業が倒産するなどの事態が起きた時には、売掛債権を譲渡した企業にその負担を負わせる「リコース取引」が用いられることもあります。すなわち、債権譲渡企業に売掛債権の買戻しを求めることができる特約を付けることで、ファクタリング業者は債権回収リスクを負わずに済みます。こうなると、債権の買い取りではなく、実質的には融資した資金を返済させる貸金業と同視することができます。このような考え方で、ファクタリングに名を借りた貸金業だとして裁判所が違法性を認定する理由になります。

②連帯保証人や担保を求めているか否か

本来のファクタリングであれば、単純な債権の売買取引ですから、そこに担保や保証人といったものは何ら関係してこないはずです。しかし悪質な業者は、資金回収を確実なものにするために、担保を要求したり、保証人を立てることを要求することもあります。他の売掛先に対して保有する売掛債権を担保にしたり、会社代表者を連帯保証人にするなどした場合、やはり実質的には貸金と同様と判断して裁判所が違法性を認定する理由になります。以上が金融庁や裁判所の見立てですが、裁判所の判断はどうしても過去の判例に添うようになされるため、革新的な判断ができない傾向にあります。

事業者向けファクタリングについての近時のいろいろな見解

近時のいろいろな見解としては、買戻し特約の有無や担保・保証人の設定の有無など形式的なことよりも、貸金業にあたるかどうかの判断はもっと実質的なところから判断すべきと考る人も多いようです。

例えば、以下のようなケースでも過払い金返還請求ができるとする見解もあります。

①契約書が存在しない

②契約内容に債権売買の明記がない

③手数料が年利換算で利息制限法の上限金利を超えている(適正な三社間ファクタリングは除く)

④2社間取引である

⑤分割払いの精算方法をとる

事業者向けファクタリングについての東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)

では、東京弁護士会ではファクタリングについてどう見ているのか、次の項で見てみましょう。東京弁護士会は最近の傾向を読み取りかなり踏み込んだ見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)を出しておりますが、今後、実態を見た見解であるとしてこれが主流になっていく可能性が高いと思われます。

東京弁護士会では、いわゆるファクタリングという名前で資金流通サービスを提供しているものの、その手数料は非常に高く、実質的には高金利で貸し付けをしているとみるべき事案が多いと認識しています。

会の見解では、以下の性質がある取引はファクタリングに名を借りた貸付業であると解釈すべきだとしています。

①譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合(リコース条項がある場合)

②債務者(売掛先等)への通知や債務者の承諾の必要がない場合(債権譲渡通知が不要な場合)

③譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合(回収業務委託契約がある場合)

東京弁護士会では、偽装ファクタリング業者の規制を求める意見書(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)を作成し、関係機関に提出しています。

これまでは上記①(リコース条項がある場合)の性質があるケースのみが貸金業だとする風潮がありましたが、今後はもっと幅広く貸金業認定の網を広げていくようになるでしょう。

上記②(債権譲渡通知が不要な場合)は二社間ファクタリングそのものですし、③(回収業務委託契約がある場合)も二社間ファクタリングのほとんどのケースで契約に盛り込まれる内容です。

上記に照らすと、現在活動している事業者ファクタリングのほぼ全てが規制されることになり、不当に高い手数料に悩まされる被害を無くしていくことができます。

東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)のポイント

前出の東京弁護士会の意見書(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)ですが、ここで見解の要点を抽出して解説してみます。

ファクタリングがなぜ貸金業とみなされることになるのか、論理だてて説明がなされているので、この部分を抽出して見ていきいます。

1、貸金業法では、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付」は「金銭の貸付け」であると明記している

2、出資法でも、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付」は「金銭の貸付けとみなす」と明記している。

3、上記1と2から、例え金銭の貸付けでなく債権の売買取引(つまりファクタリング取引)だったとしても、金銭の交付と返還が約束されている内容であれば、貸金業および出資法の規制対象になる。

4、売掛先の倒産等に備えて債権回収リスクを債権譲渡人に負わせる内容がある場合(リコース条項がある場合)、手形の割引にも近く、貸し付けと同視でき、貸金業に該当する

5、売掛先への通知や承諾の必要がない場合(債権譲渡通知が不要な場合)や売掛先が取引に関与せずまた資金回収の義務を債権譲渡人に負わせる債権譲渡人がファクタリング業者に返金する場合(回収業務委託契約がある場合)、実質的に債権担保貸付と同視でき、貸金業に該当する

6、現在問題になっている高額な手数料負担を負わせるファクタリング取引(いわゆる二社間ファクタリング)は4及び/又は5に該当するものであるから、二社間ファクタリングは、貸金業であるにも関わらず無登録で事業を行っていることになり、貸金業法違反となる。同時に、手数料が出資法で定める年利を超える場合は出資法違反にもなる。

以上が事業者向けファクタリングのうち二社間ファクタリングがなぜ貸金業に該当し、規制対象になるのかという説明です。

東京弁護士会は債権譲渡通知が不要な場合や回収業務委託契約がある場合も貸金業だとした点が画期的である!

このなかで、特に5が重要です。

貸金業法は、「金銭の貸付け」は「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付を含む。」としている(同法第2条第1項)。また、出資法も、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」は「金銭の貸付けとみなす。」としている(法第7条)。
したがって、たとえファクタリング取引(売買契約)の形式(金銭消費貸借契約以外の法形式)をとっていたとしても、それだけで、当然に貸金業法および出資法の適用を免れるものではない。いわゆるファクタリング取引であっても、経済的に貸付け(金銭の交付と返還の約束が行われているもの。)と同様の機能を有しているものは、貸金業法第2条第1項および出資法第7条の「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当することになる。

として、貸金業法の条文ですが、「その他これらに類する方法」も貸金業であると定められていることを強調しています。そのうえで、

ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合(いわゆる二者間ファクタリング)も、売買の目的物とされる債権を譲渡人から譲受人に確定的に移転させ、譲受人から債務者に対して直接その支払を求めることは、原則として予定されず、譲受人は通常、譲渡人に対してその支払を求めることが想定されていることなどからすれば、実質的には、経済的に債権担保貸付けと同様の機能を有しているものといえるから、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると解すべきである。
このところ問題となっている事例の多くは、これらに当たると考えられるものである。

として、債権譲渡通知が必要ない場合や回収業務委託がなされている場合は、確定的な債権の売買ではなく、債券担保貸付と同じであり、貸金業法の「その他これらに類する方法」に該当するため二社間ファクタリングは貸金業だと断じているのです。

東京弁護士会は給与ファクタリングのみならず事業者ファクタリングも「偽装ファクタリング」として一括したところも画期的である!

さらに、東京弁護士会の意見書では給与ファクタリングについても述べられています。

すでに金融庁が行ったノンアクションレターによる公式見解で、給与ファクタリングが貸金業に該当するとの解釈を行っており、また裁判においても給与ファクタリング契約は無効であるとの判断がされているから、関係機関の一層の協力により被害を無くしていくべきだ、と述べています。

大枠の考え方として、本来あるべき適切なファクタリングに対し、適切でない形態を「偽装ファクタリング」として括っています。

偽装ファクタリングにはまず給与ファクタリングが含まれ、事業者向けファクタリングのうち二社間ファクタリングも含まれてくるということです。

ファクタリングの被害相談は取扱豊富な当事務所まで

給与ファクタリングや事業者向けファクタリングで高額な手数料負担を背負わされたら、過払い金返還請求でお金を取り戻せる可能性があります。

同じ金銭からみの問題でも、金融分野は独特のロジックや考え方を用いる必要があり、その道で多くの経験を積まなければ適切な対応が難しいという特徴があります。

特に給与ファクタリングを利用した場合、ほとんどのケースで相手業者の責任を追及することができますから、事業者ファクタリングを利用されている皆様も、泣き寝入りせずにぜひ声を上げてください。

事業者向けでも二社間ファクタリングを利用した場合、過払い金返還請求ができることがあります(東京弁護士会の見解に基づけば今後は過払い金返還請求ができるのです)。

「会社の急な資金繰りでファクタリングを利用したらファクタリングの手数料負担が重くさらに資金繰りが悪化してしまった」などファクタリング問題でお悩みの方は、当事務所までお気軽にご連絡を頂ければ幸いです。