ファクタリングとは 法的な構造、取引の類型、負担の把握の方法及び契約上の留意事項

この記事の位置付け
ファクタリングの検討は、取引の仕組みと負担の構造を理解する場面と、個別の業者及び契約の内容を見極める場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、法的な構造と取引の類型及び契約上の留意事項を扱います。
▶ ファクタリングの問題点 負担の水準、契約の内容及び運用の実態から見た留意事項
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ファクタリングという語は、近年、中小企業の資金調達に関する説明の中で頻繁に用いられるようになりました。もっとも、その内容は一様ではなく、金融機関が行う売掛債権の流動化から、事業者向けに広告されている資金化の役務まで、法的な構造も負担の水準も大きく異なるものが同じ名称で呼ばれています。
当事務所には、ファクタリングを利用した後に資金繰りが悪化した、業者から強い催促を受けている、取引先へ債権譲渡の通知を送ると告げられたというご相談が数多く寄せられます。その多くは、契約の締結に際して、取引の法的な構造と負担の水準が正確に把握されていなかった事案です。
本ページでは、ファクタリングの法的な構造、類型、負担の考え方、契約において問題となる条項、及び利用に際して確認すべき事項を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。
ファクタリングの法的な構造
ファクタリングは、事業者が有する売掛債権を第三者へ譲渡し、支払期日の前に資金を得る取引です。法律上の性質は、指名債権の売買です(民法第555条)。金銭の貸付けではありません。
債権の譲渡は、譲渡人と譲受人との間の合意によって効力を生じます。もっとも、譲渡人が債務者に対して譲渡の通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができないものとされています(民法第467条第1項)。債務者以外の第三者に対抗するためには、通知又は承諾が確定日付のある証書によってされることを要します(同条第2項)。
また、法人が金銭債権を譲渡する場合には、債権譲渡登記によって第三者対抗要件を備えることができます(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項)。この場合、債務者に対する対抗要件は、登記事項証明書を交付して通知することにより備えられます(同条第2項)。
なお、譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示がされていても、債権の譲渡の効力は妨げられません(民法第466条第2項)。もっとも、譲受人が当該意思表示を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、債務者は、履行を拒み、譲渡人に対する弁済等をもって譲受人に対抗することができます(同条第3項)。
取引の類型
2社間ファクタリング
譲渡人と譲受人のみが当事者となる類型です。売掛先に対する通知はされず、譲渡人が売掛先から回収した資金を譲受人へ引き渡す取扱いとなります。
売掛先に譲渡の事実を知られないという利点がある一方で、譲受人は売掛先の信用を直接に把握することができず、かつ回収を譲渡人に依存することとなりますので、手数料は高くなります。
3社間ファクタリング
売掛先に対して債権譲渡の通知をし、又は売掛先の承諾を得たうえで、譲受人が売掛先から直接に支払を受ける類型です。譲受人にとって回収の確実性が高いことから、手数料は相対的に低くなります。他方で、売掛先に対して譲渡の事実を明らかにすることとなります。
買取型と保証型
買取型は、売掛債権を譲渡して資金を得るものです。保証型は、売掛先が支払をしない場合に備えて保証を受けるものであり、資金の交付を目的とするものではありません。両者は目的を異にしますので、混同しないよう注意を要します。
負担の水準の把握の方法
ファクタリングの負担は、売掛債権の額面と実際に受領する金額との差額です。これを期間で除し、年率に引き直すことにより、他の資金調達手段と比較することができます。
例えば、額面1000万円の売掛債権について、支払期日までの期間が1箇月であり、実際に受領する金額が900万円である場合、差額は100万円です。これは額面の10パーセントに相当し、年率に引き直しますと120パーセントに相当します。
手数料のほか、保証金、事務手数料、調査費用、登記費用等の名目で控除がされることがあります。負担の水準を把握するに当たっては、名目にかかわらず、実際に受領する金額を基準としてください。
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
契約において確認すべき条項
| 買戻し及び償還請求 | 売掛先が支払をしない場合に、譲渡人が買い戻す義務、又は譲受人に対して償還する義務が定められていることがあります。この場合、回収不能の危険は譲渡人が負うこととなります。 |
| 表明及び保証 | 譲渡する債権が実在すること、金額に誤りがないこと、他に譲渡していないこと、譲渡を禁止する特約がないこと等を表明し、保証する条項です。違反した場合には、契約の解除、損害の賠償等の責任が生じます。 |
| 回収金の管理 | 売掛先から回収した資金を分別して管理し、直ちに譲受人へ引き渡す旨が定められることがあります。これに反した場合、横領罪(刑法第252条)の成否が問題となることがあります。 |
| 債権譲渡の通知書の預託 | 契約の締結に際して、譲渡人の名義による通知書に署名押印を求め、譲受人が保管する取扱いが広く行われています。 |
| 期限の利益の喪失 | 一定の事由が生じた場合に、直ちに全額の支払を求めることができる旨が定められます。事由の範囲を確認する必要があります。 |
| 損害金及び違約金 | 引渡しが遅滞した場合の損害金及び違約金の水準を確認してください。 |
| 連帯保証及び担保 | 代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保が求められることがあります。事業と個人の責任が結び付きますので、慎重な検討を要します。 |
実務上よく問題となる点
第1に、取引が反復し、負担が累積することです。1回の取引で終了することが予定されておらず、次の譲渡によって前回の引渡しに充てるという循環が生じますと、手数料の累積により資金繰りは加速度的に悪化します。
第2に、譲渡の対象とした債権の内容に事実と異なる部分がある場合の責任です。実在しない債権を譲渡し、又は金額を過大に記載した資料を提出した場合には、民事上の責任にとどまらず、詐欺罪(刑法第246条)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条、第161条)の成否が問題となります。
第3に、同一の債権を複数の業者へ譲渡した場合です。この場合、対抗要件を先に備えた者が優先します。後れた譲受人に対しては、表明及び保証の違反に基づく責任が問題となります。
第4に、回収した資金を引き渡さなかった場合です。分別して管理すべき旨が定められているにもかかわらず、他の支払に充てた場合には、横領罪の成否が問題となります。
第5に、売掛先に知られることです。2社間ファクタリングであっても、債権譲渡登記の存在、通知の送付、業者からの連絡等により知られることがあります。
取引の場面ごとに問題となる事項
契約の締結の場面
実際に受領することのできる金額、控除の名目と内訳、買戻し又は償還の事由の範囲、期限の利益の喪失の事由、損害金及び違約金の水準、債権譲渡の通知が送付される要件、債権譲渡登記の対象となる債権の範囲、連帯保証及び担保の範囲を、書面により確認します。
資金の受領の場面
契約書に記載された金額と、実際に入金された金額が一致するかどうかを確認します。差異がある場合には、その理由を書面により確認してください。
回収及び引渡しの場面
売掛先からの入金の日と、譲受人への引渡しの期日が一致しないことがあります。分別して管理すべき旨が定められている場合には、他の資金と混同しないよう管理してください。
遅滞が生じた場面
遅滞する見込みが生じた段階で、遅滞の理由、入金の見込み及び履行することのできる支払の内容を、資料を添えて業者へ説明します。連絡を絶つことは、債権譲渡の通知の送付を早めます。
取引を終了する場面
債権譲渡登記がされている場合には、抹消への協力を求めます。契約書において、完済の場合に抹消に協力する旨が定められているかどうかを確認してください。あわせて、署名押印して交付した通知書の返還を求めます。
他の資金調達手段との位置付け
ファクタリングは、資金化までに要する期間が短く、売掛先に知られないことが予定されている点において、他の手段にない特徴があります。他方で、負担の水準は高く、取引が反復した場合には累積します。
したがって、一時的かつ限定的な不足に対する手段として用いる限りは機能します。他方で、構造的な資金不足に対する手段として反復して用いますと、事業の継続を困難にします。
資金が不足する原因が構造的なものである場合には、売掛金の回収の期間の短縮、支払の期間の延長、在庫の圧縮、金融機関からの借入れといった手段を併せて検討する必要があります。ファクタリングは、これらの手段が整うまでの期間をつなぐものとして位置付けることが適切です。
いま確認していただきたいこと
1 実際に受領した金額と、引き渡すこととなる金額を確認し、差額を期間で除して年率に引き直してください。
2 買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、損害金及び違約金に関する条項の有無並びに内容を確認してください。
3 債権譲渡の通知書に署名押印をして交付しているかどうかを確認してください。
4 債権譲渡登記の有無を、登記事項概要証明書により確認してください。
5 業者の商号、所在地及び代表者を、登記事項証明書により確認してください。
6 連帯保証又は担保の差入れの有無を確認してください。
7 複数の業者と取引がある場合には、業者ごとの残額と支払期日を一覧にしてください。
よくあるご質問
ファクタリングは借入れではないのですか。
法律上の性質は売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありません。したがって、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。もっとも、契約の内容及び運用の実態によっては、実質において貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例があります。
手数料に上限はありますか。
利息制限法及び出資法の適用がありませんので、法令上の上限はありません。実際に受領する金額を基準として、負担の水準を把握してください。
売掛先の承諾を得ずに譲渡することはできますか。
譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示がされていても、譲渡の効力は妨げられません(民法第466条第2項)。もっとも、譲受人が当該意思表示について悪意又は重大な過失である場合には、債務者は履行を拒むことができます(同条第3項)。
売掛先が支払をしない場合、誰が負担しますか。
契約の定めによります。買戻しの義務又は償還の義務が定められている場合には、譲渡人が負担することとなります。
2社間ファクタリングであれば売掛先に知られませんか。
知られないことが予定されている仕組みですが、債権譲渡登記の存在、通知の送付その他の事情により知られることがあります。知られない旨の説明を前提として判断することは避けてください。
資金繰りが苦しく、既に複数の業者と取引をしています。
資金の流れの全体を把握したうえで、対応の順序を定める必要があります。個別に応答しますと、全体の収拾が困難になります。早い段階でご相談ください。
請求書の金額を実際より多く記載してしまいました。
民事上の責任にとどまらず、刑事上の責任が問題となり得ます。業者から指摘を受ける前の段階が、最も選択肢の広い局面です。
おわりに
ファクタリングは、法的には売掛債権の売買であり、正当な資金調達の手段として機能する取引です。他方で、負担の水準、契約の内容及び運用の実態を確認しないまま取引を重ねますと、事業の継続が困難となります。
既に取引を重ねている場合には、まず資金の流れの全体を把握することが出発点となります。判断が遅れるほど、選択肢は狭まります。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
ファクタリングの仕組み及び契約内容に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
出典
- 民法第466条第2項及び第3項、第467条第1項及び第2項、第555条
- 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項及び第2項
- 刑法第159条、第161条、第246条、第252条
- 貸金業法第2条第1項
- 利息制限法第1条
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条
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