ファクタリングの問題点 負担の水準、契約の内容及び運用の実態から見た留意事項

利点と欠点を対比した図

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ファクタリングの検討は、取引の仕組みと負担の構造を理解する場面と、個別の業者及び契約の内容を見極める場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、負担の水準と契約の内容及び運用の実態から見た留意事項を扱います。

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ファクタリングの利用を検討している事業者の方から、どのような点に注意すべきかというご質問をいただきます。また、既に利用している事業者の方から、資金繰りがかえって苦しくなったというご相談を数多くお受けしています。

ファクタリングは、売掛債権を支払期日の前に資金化する手段として、正当な機能を有する取引です。他方で、負担の水準、契約の内容及び運用の実態によっては、事業の継続を困難にすることがあります。本ページでは、その問題点を整理します。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングは、事業者が有する売掛債権を業者へ譲渡し、支払期日の前に資金を得る取引です。譲渡の対価は、売掛債権の額面から手数料を控除した金額となります。

当事者の数により、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分けられます。2社間ファクタリングは、譲渡人と譲受人のみが当事者となり、譲渡人が売掛先から回収した資金を譲受人へ引き渡す仕組みです。3社間ファクタリングは、売掛先に対して債権譲渡の通知をし、又は売掛先の承諾を得たうえで、譲受人が売掛先から直接に支払を受ける仕組みです。

負担の水準に関する問題

2社間ファクタリングにおいては、譲受人が売掛先の信用を直接に把握することができず、かつ回収を譲渡人に依存することとなりますので、手数料は高くなります。1回の取引の手数料が売掛債権の額面の10パーセントであり、支払期日までの期間が1箇月である場合、年率に引き直した負担は120パーセントに相当します。

この負担を運転資金から捻出することが困難である場合には、次の売掛債権を譲渡して前回の引渡しに充てるという循環が生じます。取引を重ねるごとに手数料が累積しますので、負担は加速度的に増大します。当事務所に寄せられるご相談の多くは、この段階に至ったものです。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

契約の内容に関する問題

買戻し及び償還請求 売掛先が支払をしない場合に譲渡人が買い戻す義務、又は譲受人に対して償還する義務が定められていることがあります。この場合、回収不能の危険は譲渡人が負うこととなります。
表明及び保証 譲渡する債権が実在すること、他に譲渡していないこと等を表明し、保証する条項が置かれます。違反した場合には、損害の賠償等の責任が生じます。
債権譲渡の通知書の預託 契約の締結に際して、譲渡人の名義による通知書に署名押印を求め、譲受人が保管する取扱いが広く行われています。
債権譲渡登記 法人が譲渡人である場合には、債権譲渡登記により第三者対抗要件が備えられることがあります(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項)。
損害金及び違約金 引渡しが遅滞した場合の損害金及び違約金が定められていることがあります。水準を確認する必要があります。
連帯保証及び担保 代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保が求められることがあります。

運用の実態に関する問題

第1に、手数料の内訳が明示されないことがあります。手数料のほか、保証金、事務手数料、調査費用等の名目で控除がされ、実際に受領する金額が想定より少なくなることがあります。

第2に、取引を継続することが前提とされることがあります。1回の取引で終了することが予定されておらず、次の譲渡が事実上求められることがあります。

第3に、引渡しが遅滞した場合の連絡の態様が問題となることがあります。時間帯、頻度、連絡の相手方によっては、別途の法律上の問題が生じ得ます。

第4に、2社間ファクタリングであっても、売掛先に知られることがあります。債権譲渡登記の存在、通知の送付、業者からの連絡等がその契機となります。

利用の前に整理しておくべき事項

第1に、資金が不足する原因です。売掛金の回収の期間が支払の期間より長いという構造的な原因によるものか、特定の取引先からの入金の遅れという一時的な原因によるものかによって、必要となる対応が異なります。構造的な原因による場合には、1回の資金化によって解決するものではありません。

第2に、不足する金額と期間です。金額を過大に見積もりますと、必要以上の売掛債権を譲渡することとなり、負担が増加します。他方で、過小に見積もりますと、次の期日に再び不足が生じます。

第3に、他の手段との比較です。金融機関からの借入れ、信用保証協会の保証付融資、既存の借入れの条件の変更、取引先との支払条件の協議、支出の延期又は削減を検討したうえで、なお不足する金額を確定します。

第4に、譲渡の対象とする売掛債権の選定です。主要な売掛先に対する債権を譲渡しますと、債権譲渡の通知が送付された場合の影響が大きくなります。取引の比重が小さい売掛先に対する債権から選定することが安全です。

第5に、1回で終了することができるかどうかです。次の期日にも同じ不足が生じる見込みであるならば、取引が反復することを前提として、負担の総額を試算しておく必要があります。

取引の類型ごとの留意点

2社間の取引

売掛先に譲渡の事実を知られないことが予定されていますが、保証されているものではありません。債権譲渡登記の存在、通知の送付その他の事情により知られることがあります。また、回収を譲渡人による引渡しに依存しますので、手数料の水準は高くなります。

3社間の取引

売掛先の承諾又は通知が前提となりますので、譲渡の事実が明らかになります。他方で、譲受人にとって回収の確実性が高いことから、手数料の水準は相対的に低くなります。売掛先との関係が良好であり、承諾を得ることができる見込みがあるのであれば、検討の価値があります。

保証型の取引

売掛先が支払をしない場合に備えて保証を受けるものであり、資金の交付を目的とするものではありません。買取型と混同しないよう注意を要します。

継続的な取引

基本契約を締結し、個別の譲渡を反復するものです。1回で終了することが予定されていませんので、負担が累積します。基本契約における条項が、その後のすべての取引に適用されますので、締結の際の確認が特に重要です。

資金繰りの改善のために併せて検討すべき事項

第1に、売掛金の回収の期間の短縮です。支払のサイトの短縮について、取引先と協議することが考えられます。

第2に、買掛金の支払の期間の延長です。仕入先との協議により、資金の必要額を減らすことができます。

第3に、在庫の圧縮です。過剰な在庫は、資金を固定させます。

第4に、遊休資産の処分です。使用していない不動産、車両、機械設備がある場合には、これを処分することにより資金を確保することができます。

第5に、取引先ごとの採算の確認です。売上高の大きい取引先が、必ずしも利益に貢献しているとは限りません。

第6に、金融機関との関係の構築です。資金が必要となる前の段階から、決算の内容及び事業の状況を説明しておくことが有効です。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングの利用を検討している事業者の方、及び既に利用している事業者の方に向けて、負担の水準、契約の内容及び運用の実態から見た留意事項を整理したものです。

個別の事案における判断は、ご自身の契約書の条項と取引の記録に基づいて行う必要があります。本ページの記載は、一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。

既に負担が累積している場合には、早い段階でご相談ください。時間の経過とともに、選択肢は狭まります。

用語の整理

買取型は、売掛債権を譲渡して資金を得るものです。保証型は、売掛先が支払をしない場合に備えて保証を受けるものであり、資金の交付を目的とするものではありません。両者は目的を異にしますので、混同しないよう注意を要します。

償還請求権とは、売掛先が支払をしない場合に、譲受人が譲渡人に対して支払を求めることができる権利をいいます。これが定められている場合には、回収不能の危険が譲渡人に残ることとなります。広告において「償還請求権なし」と表示されていても、契約書における買戻しに関する条項により実質的に同様の結果となることがありますので、原文により確認してください。

取引を開始した後に定期的に確認すべき事項

第1に、譲渡した債権の一覧です。売掛先、金額、支払期日、譲渡先の業者を記載した一覧を作成し、常に最新の状態に保ってください。この一覧がない状態で取引を重ねますと、同一の債権を重ねて譲渡する事故が生じます。

第2に、負担の累計です。取引ごとの手数料その他の控除を集計し、直近1年間の合計を営業利益と比較してください。

第3に、譲渡することのできる売掛債権の残量です。残量が減少しつつある場合には、循環に入っている可能性があります。

第4に、債権譲渡登記の状況です。登記事項概要証明書を定期的に取得し、登記の内容を確認してください。

第5に、業者からの連絡の内容です。従前より頻繁になり、又は態様が変化した場合には、業者の側で回収の方針が変更されている可能性があります。

利用を検討する場合に確認すべき事項

1 実際に受領する金額と、引き渡すこととなる金額を確認し、差額を期間で除して負担の水準を把握してください。

2 買戻し、償還請求、損害金、違約金に関する条項の有無及び内容を確認してください。

3 債権譲渡の通知書に署名押印を求められているかどうかを確認してください。

4 債権譲渡登記の有無を確認してください。

5 業者の商号、所在地及び代表者を、登記事項証明書により確認してください。

6 1回限りで終了することができるかどうかを確認してください。

よくあるご質問

手数料の相場はどの程度ですか。

取引の類型、売掛先の信用状況、期間によって異なりますので、一律に申し上げることはできません。少なくとも、実際に受領する金額と引き渡す金額の差額を期間で除し、年率に引き直して把握してください。

2社間ファクタリングであれば売掛先に知られませんか。

知られないことが予定されている仕組みですが、債権譲渡登記の存在、通知の送付その他の事情により知られることがあります。知られない旨の説明を前提として判断することは避けてください。

既に複数の業者と取引をしています。どうすればよいでしょうか。

資金の流れの全体を把握したうえで、対応の順序を定める必要があります。個別に応答しますと、全体の収拾が困難になります。

手数料が高額ですので、返還を請求することはできますか。

水準のみを理由として返還を請求することはできません。実質において貸付けと同視すべきであると主張する場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。

売掛先が倒産した場合、どうなりますか。

契約の定めによります。買戻しの義務又は償還の義務が定められている場合には、譲渡人が負担することとなります。

おわりに

ファクタリングは、負担の水準、契約の内容及び運用の実態を確認したうえで利用する限り、資金調達の手段として機能します。他方で、これらを確認しないまま取引を重ねますと、事業の継続が困難となります。既に取引を重ねている場合には、早い段階で全体を把握することが必要です。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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ご留意事項

本ページの記載は、ファクタリングの問題点に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第467条第1項
  • 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項
  • 貸金業法第2条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条