ファクタリングの問題点(リスクやデメリット)!

ファクタリングの問題点(リスクやデメリット)!

ファクタリング』とは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金化する資金調達方法です。

経済産業省が、ファクタリングをはじめとする売掛債権を活用した資金調達手段を推奨したことも影響し、ここ数年で大きく需要が高まり、市場も拡大していきました。

しかし、利用者が増える一方で、しっかりとファクタリングのリスクやデメリットを把握している方は非常に少ないように感じます。

確かに、ファクタリングは機動的に売掛債権を現金化できる資金調達手段ですが、ルール等がしっかりと整備されているとはお世辞にも言えず、多くのトラブルも発生しているため、活用する場合はしっかりとファクタリングの問題点も知っておかなくてはいけません。

また、メリットばかりを前面に押すファクタリング会社や、ネット上のアフィリエイト目的のサイトの情報ばかりを鵜呑みにしないことも肝要です。

皆様がファクタリングのトラブルに巻き込まれないよう、ここではファクタリングの問題点(リスクやデメリット)について弁護士が徹底解説していきます。

ファクタリングのデメリットやリスクとは?

ファクタリングは、手続きが簡略的であり、審査も銀行などと比較すると緩いことから、多くの方が軽い気持ちで利用します。

しかしその実、ファクタリングには沢山のデメリットやリスクがあるため注意が必要です。

ここでは、そのファクタリングデメリットやリスクについてご紹介していきます。

ファクタリングのデメリット

多額の手数料がかかる

ファクタリングの最大のデメリットは、多額の手数料がかかってしまう点にあります。

ファクタリングを利用した場合、諸経費等を含めた手数料を、本来支払われる売掛金から差し引かれた金額が利用者のもとへ入金されます。

その手数料設定はファクタリング会社によって異なりますが、相場としましては、2社間ファクタリングならば買取売掛金額の「10%~30%程度」、3社間ファクタリングならば「1%~5%程度」です。

通常、ファクタリングを利用する方の多くは売掛先への通知が不要となる2社間ファクタリングを選択するため、利用者の手元に残るのは、本来の売掛金から1割~3割が差し引かれた金額となってしまいます。

これは、年利で考えれば100%~300%以上にも相当します。

ファクタリングの手数料は非常に高額であり、それは法定制限法外どころの話ではありません。

3社間ファクタリングを利用する場合は通知や売掛先からの承諾が必要

2社間ファクタリングの手数料相場は「10%~30%程度」と非常に高く、とてもじゃないですが効率的な資金調達であるとはいえません。

それと比較し、3社間ファクタリングならば「1%~5%程度」と、その手数料は2社間ファクタリングと比べるとかなり安価です。(それでも、高いことには変わりありません)

ただし、3社間ファクタリングを利用するためには、「債権譲渡通知の送付や、売掛先からの承諾」という高いハードルをクリアする必要があります。

ファクタリングを利用するということは、「資金に困っている」と宣言するようなものです。

また、仮に承諾を得ることができたとしても、売掛先からの信用を失ってしまうかもしれません。

結局のところ、ファクタリングを利用するためには、高い手数料を支払う必要がある2社間ファクタリングか、売掛先の信用を失うリスクがある3社間ファクタリングしか選択は不可能であり、そのいずれかしか選択できないという点がそもそものデメリットであると言えるでしょう。

小口の売掛金では利用できないケースもあり

ファクタリングの買取下限額、上限額はファクタリング会社によって異なってきます。

そして、中には非常に高い買取上限額を設定しており、小口の売掛金のファクタリングには対応できないファクタリング会社も多くあるのです。(買取上限100万円以上など)

一般的に、ファクタリングを利用するのは中小企業や零細企業などであり、メインは小口の売掛金の現金化です。

であるのに対し、小口のファクタリングには対応できないという点は、非常に利便性に欠けています。

また、利益の取りにくい小口のファクタリングほど手数料が高くなる傾向にあるため、その点も注意が必要です。

売掛先の信用次第ではファクタリングを断られる

たとえば、銀行融資やカードローンに申し込みを行った場合、自分、または会社の信用に問題がなければ審査に通過することができます。

しかし、ファクタリングの場合は審査対象が売掛先となるため、自分や会社の信用に問題がなくとも、売掛先の信用次第ではファクタリングを断られてしまいます。

よく、「赤字経営や税金滞納などの企業でも資金を調達できる」というファクタリング会社の広告を目にしますが、売掛先が信用のない企業では断られる可能性も十分にあるため、その点は留意が必要です。

手数料を明示していないファクタリング会社が多い

ファクタリング会社のデメリットの一つに、「多くのファクタリング会社が手数料を明示していない」という点が挙げられます。

通常、ファクタリングを利用する上で、手数料というのはそのファクタリング会社を利用するかを判断する重要なポイントとなります。

しかし、多くのファクタリング会社は手数料上限をホームページ等で明示しておらず、そもそも「手数料そのものすら記載していない」というケースも珍しくないのです。

手数料がはっきりしていないということは、いくら請求されるか青天井でわからないということです。

このような恐ろしいリスクがあっては、中々利用しにくいでしょう。

ファクタリングのリスク

売掛先が倒産した場合のリスクを問われる可能性がある

多くのファクタリング会社は、「売掛先が倒産したとしても、その責任を問うことはない」というように宣伝しています。

しかし、その情報をそのまま鵜呑みにしてはいけません。

ファクタリングには、「ノンリコース(償還請求権無なし)」と「リコース(償還請求権あり)」の2つの契約方法があり、前者であるノンリコースを選択した時だけ売掛先の倒産リスクを背負うことはなくなります。

もしリコースで契約した場合、仮にファクタリング契約が完了した後でも、売掛先が倒産し売掛金が回収できなければ、その責任の所在はファクタリングを利用した方の元へいってしまうのです。

また、確かにノンリコースはリスクを軽減することが可能ですが、その分リコースと比較して手数料が高くなってしまいます。

この辺の説明を詳しく行わないファクタリング会社も多く、ネットの広告だけの先入観で「絶対に責任は問われない」と勘違いしたまま契約してしまう方もいらっしゃいます。

後程後悔しないように、ノンリコースとリコースの違いを把握しておかなくてはいけません。

ファクタリング業界にはヤミ金まがいの悪徳業者も存在する

ファクタリングは、まだまだ業界のルールが整備されておらず規制もゆるいため、参入障壁が低い状態が続いています。

そのため、中にはヤミ金まがいの悪徳業者も存在しているのです。

また、ファクタリングのシステムを理解せず利用してしまっている方も多いため、ファクタリングを貸し付けと勘違いし、闇金と同じ手口で利息を支払い、お金を巻き上げられてしまう方もいらっしゃいます。

その他にも、法外な手数料を搾取される、「保証金」や「手付金」などと難癖をつけられ入金額を減らされる、契約書を渡してもらえないなど、これまでに多くのトラブルが発生しています。

このような悪徳業者を避けるためにも、ファクタリングを活用する場合はファクタリング会社を選定するところから始めなくてはいけません。

2社間ファクタリングでも売掛先へファクタリングの利用がバレる可能性はある

ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類の取引方法があります。

このうち、売掛先への通知が不要な2社間ファクタリングは、「売掛先にバレることなくファクタリングを完結できる」という点を売りにしており、実際に多くの方がそのメリットに魅力を感じ選択します。

しかし、ほとんどのファクタリング会社は契約時に「債権譲渡登記」を求めてきます。

債権の登記情報というのは誰でも確認することが可能であるため、債権譲渡登記を行った時点でファクタリングを利用したことは(債権をファクタリング会社に譲渡したこと)売掛先にバレる可能性があるのです。

ファクタリングに頼っている事実を取引先が知れば、「ファクタリングを利用するほど資金繰りが苦しいのでは?」と危惧し、信用を失ってしまうリスクもあります。

また、2社間ファクタリングはそのシステム上、利用者の元に振り込まれた売掛金を速やかにファクタリング会社へ振り込むことを求められますが、万が一支払いが遅延してしまった場合には売掛先へ通知が送付されてしまいます。

結局のところ、たとえ2社間ファクタリングファクタリング契約を締結したとしても、売掛先へその事実が必ずしも隠せるというわけではありません。

ファクタリング業界に沢山の悪徳業者が参入できている理由とは?

そもそも、なぜファクタリング業界にはここまで沢山の悪徳業者が蔓延しているのか、疑問に思う方も多いはずです。

その理由には、ファクタリング業に資格や貸金業の登録が不要な点が挙げられます。

通常、金銭の貸し付けを行う貸金業として開業する場合、「貸金業登録」を行うことが必須となり、この場合は金融庁の監督のもとで営業を行うため、不正が発生しにくくなります。

また、「利息制限法」という明確なルールがあるため、悪徳業者も参入しにくいのです。

しかし、ファクタリングの場合は貸し付けではなく、あくまで債権の売買(譲渡)による取引となるため、貸金業登録は不要となっています。

さらには、貸金業法が適用されないことから、利息制限法の縛りを受けることもありません。

ファクタリングにはある程度の手数料相場は存在しますが、明確な制限はないため、最終的にはファクタリング会社の裁量次第でいくらでも設定できるのです。

ファクタリング業界に対する法規制が整備されていないため、中小企業や小規模事業主などを搾取しようとする悪徳業者が非常に参入しやすい状況にあります。

大手企業も参入をしない2社間ファクタリングの大きなリスクとは?

前述の通り、ファクタリング業というのは貸金業登録などが不要な業種です。

そのため、あまり耳にしたことのないような、中小規模の新興ファクタリング会社が乱立しています。

しかし、大手金融会社がファクタリング業に参入していないのかといえば、決してそのようなことはありません。

事実、大手系列としましては、みずほ銀行の子会社である「みずほファクター株式会社」や、三菱UFJ銀行の子会社である「三菱UFJファクター株式会社」などがあります。

ですが、これらの大手企業が提供しているのはあくまで「3社間ファクタリング」のみであり、「2社間ファクタリング」には対応していません。

2社間ファクタリングは、とてもニーズが高いです。

それでも、大手金融会社が手を出さない背景には、2社間ファクタリングが提供する側にとっても大きなリスクを伴うものであることが影響しています。

前述の通り、2社間ファクタリングの手数料相場は「10%~30%程度」と非常に高額です。

2社間ファクタリングは、そのシステム上貸し倒れのリスクが伴ってしまうものであるため致し方ない点もあるのですが、その高額な手数料は、年利換算すれば大幅に利息制限金利を超えてしまうものとなっています。

確かに、現時点でファクタリングという業種は貸金業法が規定する貸金に分類されないこととなっていますが、これはあくまで明確に定義づけされていないだけです。

これがもし、利用者に提訴された場合はどうでしょうか?

裁判所が「ファクタリングが利息制限法に該当する」との判決を行えば、貸金業登録がはく奪されてしまうかもしれません。

また、後述しますが、実際にこれまでにファクタリング案件で起訴されたケースは少なくないのです。

それほどまでに、2社間ファクタリングとは、大手金融会社が参入を見合わせるほどの大きなリスクを伴うものなのです。

ファクタリングに関連する事例

ここでは、ファクタリングに関連する過去の事例をご紹介していきます。

ファクタリングに関連する事例

貸金業法、出資法違反との判決が下った「給与ファクタリング」

ファクタリングは様々な売掛債権を早期資金化できる点を強みとしていますが、近年急激に需要が高まったものに、「給与ファクタリング」というものがあります。

給与ファクタリングとは、「個人が会社などから受け取る給与(売掛債権)を、ファクタリング会社に買い取ってもらう」というシステムのファクタリングです。

利用者は手数料が引かれた現金を給料日前に受け取ることが可能となり、そして給料日に振り込まれるお金をファクタリング会社に支払います。

この給与ファクタリングというのは、個人対ファクタリング会社で契約を行うタイプのファクタリングであり、「前借感覚」で簡単に利用できることから、利用者が急増していました。

しかし、法律で規制されない給与ファクタリングには多額の手数料が必要であり、相場では「約20%~30%」、高い業者である場合は「40%以上」もの手数料を搾取していました。

法律上ではグレーであるとしても、これではトラブルが発生して当然です。

事実、被害者の中には集団起訴に踏み切る方もおり、ついに、令和2年3月24日に東京地方裁判所は給与ファクタリング2件について、「貸金業法、出資法違反で契約は無効」という判決を下しました。

裁判所が、提訴されたファクタリング会社を「不法原因給付、及びヤミ金である」と認定したのです。

さらには、金融庁もノーアクションレターへの回答により給料ファクタリングに対する見解を発表しました。

その見解を要約すると、「給与ファクタリング業者は必ず利用者と直接金銭の交付、返還を行う必要があり、これは貸付けと同様の機能を有しているものと考えられるため、「貸金業」に該当すると考えられる」ということです。

この結果から鑑みれるように、ファクタリングという資金調達手段が、いかに大きなリスクが伴っているかがわかります。

全国初のファクタリングの検挙事例

2017年1月、東洋商事とグループ会社のMINORIが貸金業法違反と出資法違反の疑いで元経営者ら男8人が逮捕されました。

容疑は、貸金業の登録をしていない中で2016年5~8月に、堺市と三重県鈴鹿市の会社経営者2人に40~50万円の貸し付けを行なった疑いがもたれたためです。

また、東洋商事グループは、他にも250社に対して1億円以上の貸付をしていた疑いがあります。

ちなみに、三浦容疑者は2003年7月にも闇金融運営で法定利息の50倍を脅し取ったとして逮捕された前科を持っていたため、ヤミ金からうま味のあるファクタリングを装った運営にシフトチェンジしたのではないかと予想されています。

本一件は、ファクタリングの全国初の検挙事例として有名です。

ファクタリングを装ったヤミ金業者の逮捕②

2019年9月25日に、ファクタリングを装い高金利で貸すヤミ金を営んでいたとして、千葉県警と岩手県警の合同捜査本部が東京都内のコンサルティング会社社長の男ら11人を貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の疑いで逮捕しました。

この会社は貸金業登録を行わず、ファクタリングを装いながら債権を買い取らず担保にし、金を融資して利息を搾取していたのです。

また、18年10月~19年4月ごろには、中小企業の経営者5人から法定金利の約13~47倍にあたる利息を取っていたことがわかっています。

まとめ

ファクタリングが、必ずしも悪というわけではありません。

事実、法律違反を行うことなく業務に励んでいるファクタリング会社も多くありますし、中にはファクタリングという資金調達システムを必要としている方もいらっしゃいます。

しかし、ファクタリングという業界がそもそもグレーな点が非常に多く、ヤミ金まがいの悪徳業者がはびこっているのも事実です。

また、給与ファクタリングの一件では裁判所が給与ファクタリングを「貸金業法違反」「出資法違反」であることを認めており、さらには、金融庁も給与ファクタリングが「貸金業」であるという見解を示しました。

既にファクタリングを装ったヤミ金業者の摘発事例も多くあり、これらのことから、ファクタリングが大きなデメリットやリスクを伴うものであることは明確です。

現時点で実際にファクタリングを利用し、高額な手数料や利息の請求などで困っている方も大勢いらっしゃいます。

どのような状況にあっても、「手遅れ」ということはありません。

ファクタリングでお困りの方は、問題解決のための第一歩として、ファクタリング問題の専門家である弁護士への相談をご検討ください。