二社間ファクタリングは違法(過払い金請求が可能)のようです!弁護士会意見書!
近時、給与ファクタリングのみならず、事業者ファクタリング(二社間ファクタリング)についても風向きが変わってきており、無登録貸金業とされ違法となり過払い金返還請求ができるようになってきており、本稿ではそのことを明快に指摘している弁護士会意見書について詳述します。ファクタリング業者に対して過払い金の返還を請求したい方必読です。
弁護士会意見書によると二社間ファクタリングは違法(過払い金請求が可能)なのか?
これまで、金融庁や裁判所も、事業者ファクタリング(二社間ファクタリング)について、無登録貸金業とされ違法となり過払い金返還請求ができる、とは明快に言ってこなかったように思います。
事業者ファクタリング(二社間ファクタリング)について、リコース条項(償還請求あり)のファクタリング、すなわち、取引先が売掛金を支払えない場合に債権譲渡会社に請求できる場合や、売掛債権の買戻し特約が付されたファクタリングについては、債権売買ではなく貸金であるとして、無登録貸金業であるとする金融庁の見解や裁判例はありましたが、それ以上は特段明快に言っておらず、ファクタいリング業者では、これらの見解に抵触しないよう、ファクタリング契約を工夫し、これらの問題を回避してきました。
しかし、二社間ファクタリングについての東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)は、さらに一歩踏み込んでおり、公的機関がこのような見解を示したことは、今後のファクタリング業者に大きな影響を与えるものと思われます。
事業者向けファクタリングについての東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)
では、東京弁護士会ではファクタリングについてどう見ているのか、次の項で見てみましょう。東京弁護士会は最近の傾向を読み取りかなり踏み込んだ見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)を出しておりますが、今後、実態を見た見解であるとしてこれが主流になっていく可能性が高いと思われます。
東京弁護士会では、いわゆるファクタリングという名前で資金流通サービスを提供しているものの、その手数料は非常に高く、実質的には高金利で貸し付けをしているとみるべき事案が多いと認識しています。
会の見解では、以下の性質がある取引はファクタリングに名を借りた貸付業であると解釈すべきだとしています。
①譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合(リコース条項がある場合)
②債務者(売掛先等)への通知や債務者の承諾の必要がない場合(債権譲渡通知が不要な場合)
③譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合(回収業務委託契約がある場合)
東京弁護士会では、偽装ファクタリング業者の規制を求める意見書(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)を作成し、関係機関に提出しています。
これまでは上記①(リコース条項がある場合)の性質があるケースのみが貸金業だとする風潮がありましたが、今後はもっと幅広く貸金業認定の網を広げていくようになるでしょう。
上記②(債権譲渡通知が不要な場合)は二社間ファクタリングそのものですし、③(回収業務委託契約がある場合)も二社間ファクタリングのほとんどのケースで契約に盛り込まれる内容です。
上記に照らすと、現在活動している事業者ファクタリングのほぼ全てが規制されることになり、不当に高い手数料に悩まされる被害を無くしていくことができます。
東京弁護士会の新しい見解(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)のポイント
前出の東京弁護士会の意見書(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)ですが、ここで見解の要点を抽出して解説してみます。
ファクタリングがなぜ貸金業とみなされることになるのか、論理だてて説明がなされているので、この部分を抽出して見ていきいます。
- 貸金業法では、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付」は「金銭の貸付け」であると明記している
- 出資法でも、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付」は「金銭の貸付けとみなす」と明記している。
- 上記1と2から、例え金銭の貸付けでなく債権の売買取引(つまりファクタリング取引)だったとしても、金銭の交付と返還が約束されている内容であれば、貸金業および出資法の規制対象になる。
- 売掛先の倒産等に備えて債権回収リスクを債権譲渡人に負わせる内容がある場合(リコース条項がある場合)、手形の割引にも近く、貸し付けと同視でき、貸金業に該当する
- 売掛先への通知や承諾の必要がない場合(債権譲渡通知が不要な場合)や売掛先が取引に関与せずまた資金回収の義務を債権譲渡人に負わせる債権譲渡人がファクタリング業者に返金する場合(回収業務委託契約がある場合)、実質的に債権担保貸付と同視でき、貸金業に該当する
- 現在問題になっている高額な手数料負担を負わせるファクタリング取引(いわゆる二社間ファクタリング)は4及び/又は5に該当するものであるから、二社間ファクタリングは、貸金業であるにも関わらず無登録で事業を行っていることになり、貸金業法違反となる。同時に、手数料が出資法で定める年利を超える場合は出資法違反にもなる。
以上が事業者向けファクタリングのうち二社間ファクタリングがなぜ貸金業に該当し、規制対象になるのかという説明です。
東京弁護士会は債権譲渡通知が不要な場合や回収業務委託契約がある場合も貸金業だとした点が画期的である!
このなかで、特に5が重要です。
貸金業法は、「金銭の貸付け」は「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付を含む。」としている(同法第2条第1項)。また、出資法も、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」は「金銭の貸付けとみなす。」としている(法第7条)。 したがって、たとえファクタリング取引(売買契約)の形式(金銭消費貸借契約以外の法形式)をとっていたとしても、それだけで、当然に貸金業法および出資法の適用を免れるものではない。いわゆるファクタリング取引であっても、経済的に貸付け(金銭の交付と返還の約束が行われているもの。)と同様の機能を有しているものは、貸金業法第2条第1項および出資法第7条の「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当することになる。 |
として、貸金業法の条文ですが、「その他これらに類する方法」も貸金業であると定められていることを強調しています。そのうえで、
ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合(いわゆる二者間ファクタリング)も、売買の目的物とされる債権を譲渡人から譲受人に確定的に移転させ、譲受人から債務者に対して直接その支払を求めることは、原則として予定されず、譲受人は通常、譲渡人に対してその支払を求めることが想定されていることなどからすれば、実質的には、経済的に債権担保貸付けと同様の機能を有しているものといえるから、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると解すべきである。 このところ問題となっている事例の多くは、これらに当たると考えられるものである。 |
として、債権譲渡通知が必要ない場合や回収業務委託がなされている場合は、確定的な債権の売買ではなく、債券担保貸付と同じであり、貸金業法の「その他これらに類する方法」に該当するため二社間ファクタリングは貸金業だと断じているのです。
東京弁護士会は給与ファクタリングのみならず事業者ファクタリングも「偽装ファクタリング」として一括したところも画期的である!
さらに、東京弁護士会の意見書では給与ファクタリングについても述べられています。
すでに金融庁が行ったノンアクションレターによる公式見解で、給与ファクタリングが貸金業に該当するとの解釈を行っており、また裁判においても給与ファクタリング契約は無効であるとの判断がされているから、関係機関の一層の協力により被害を無くしていくべきだ、と述べています。
大枠の考え方として、本来あるべき適切なファクタリングに対し、適切でない形態を「偽装ファクタリング」として括っています。
偽装ファクタリングにはまず給与ファクタリングが含まれ、事業者向けファクタリングのうち二社間ファクタリングも含まれてくるということです。
ファクタリングの被害相談は取扱豊富な当事務所まで
給与ファクタリングや事業者向けファクタリングで高額な手数料負担を背負わされたら、過払い金返還請求でお金を取り戻せる可能性があります。
同じ金銭からみの問題でも、金融分野は独特のロジックや考え方を用いる必要があり、その道で多くの経験を積まなければ適切な対応が難しいという特徴があります。
特に給与ファクタリングを利用した場合、ほとんどのケースで相手業者の責任を追及することができますから、事業者ファクタリングを利用されている皆様も、泣き寝入りせずにぜひ声を上げてください。
事業者向けでも二社間ファクタリングを利用した場合、過払い金返還請求ができることがあります(東京弁護士会の見解に基づけば今後は過払い金返還請求ができるのです)。
「会社の急な資金繰りでファクタリングを利用したらファクタリングの手数料負担が重くさらに資金繰りが悪化してしまった」などファクタリング問題でお悩みの方は、当事務所までお気軽にご連絡を頂ければ幸いです。