ファクタリングは貸金業法・利息制限法に違反しているのか?真正売買かどうかが違法かどうかを決める!
ファクタリングは売掛債権の売買なのか?貸金ではないのか?
ファクタリングとは、会社が取引先に対する売掛債権をファクタリング会社に売却し、売掛債権の支払い日よりも早く現金化し、資金繰りを改善する金融取引です。
しかし、近時、多くみられる、ファクタリング会社によるファクタリングは、そもそも、融資や貸金と言った意味で使用されているものが多くなっています。
ファクタリング会社としては、主としてリース会社が行っていますが、もともと貸金業者やヤミ金業者だった悪質な業者が、貸金業法の強化に伴い、取り扱いを強化していたりすることに鑑みると、実体は、やはり「貸金」なのでしょう。
真正売買 売買と貸金の境界線
ファクタリングの契約書を見ると、「真正売買」と言う言葉が使用されていることが多くなっています。「真正譲渡」という言葉が使用されていることもあります。
すなわち、これは何を意味するかと言えば、ファクタリング契約に基づく売掛債権の売買は、売掛債権を担保提供したのではなくて、売掛債権を売買(真正売買)したのだと言うことを強調したいのです。
しかし、実体が「貸金」であるような場合に、契約書に「売買だ!」と書きさえすれば「売買」(真正売買)になるという簡単な話ではありません。
「売買」(真正売買)と言うことができるかどうかは、以下のような事情を勘案して、総合的に決定されるものとされています。
- 当事者の意思
- 売掛債権の特定性について
- 売掛債権の価値と買取代金の均衡
- 資力担保
- 対抗要件の具備
- 回収事務の委託
- 被担保債権の存在について
この中で最も重要視されるのが、「③ 売掛債権の価値と買取代金の均衡」です。
「売掛債権の価値と買取代金の均衡」とは
本来、ファクタリングが売掛債権を売買(真正売買)したものなのであれば、売掛債権の買取価格は、資金調達コスト、債権買取事務手数料等を考慮して定められるべきものです。
これに対して、仮に、ファクタリングが売掛債権を担保提供した「貸金」なのであれば、売掛債権の価値は担保価値として把握されることになるため、これに対する融資額(売買代金額)は、現在価値に「担保掛目」を掛けた金額(売掛債権担保の担保掛目は、一般的にかなり低く設定される。)となるのが通常です。
少し考えてみてください。皆さんが、新日鉄住金に対する債権100万円を買う場合は、幾らで買いますか?このマイナス金利の環境下において、少しでも利子がつけばよい方ですし、新日鉄住金が1ヶ月で倒産するはずがありません(ファクタリングの期間はたいてい1ヶ月です)。そうであれば、99万9000円で買うと言う人もいるでしょう。
他方、銀行が土地を担保に融資をしてくれる場合を考えてみてください。幾ら高級住宅地にある立派な土地であっても、「掛目」と言うものがあり、銀行はたいてい、土地の価格めいっぱい貸してくれることはなく、8割くらいまでしか貸してくれません。
すなわち、売買(真正売買)なら満額に近い価格での取引となるはずであるのに対し、「貸金」ならかなりディスカウントされた定額での取引になるのです。
要するに、もし仮にファクタリング会社のファクタリングが「貸金」ではなく、「売買」(真正売買)なのであれば、金利は1%とは言いませんが、非常に低いものとなっているはずなのです。他方、もし仮にファクタリング会社のファクタリングが「売買」(真正売買)ではなく、「貸金」なのであれば、それなりに高い金利が要求されているはずなのです。
あなたのファクタリングは、このどちらでしょうか。
売買(真正売買)ではなく「貸金」だった場合
では、あなたのファクタリングが、売掛債権の売買(真正売買)ではなく、売掛債権を端に担保提供しただけで、金銭については「貸金」だと評価できるような場合、どうなるでしょうか。
「貸金」を行うのであれば、それは貸金業者であり、貸金業登録が必要ですが、あなたのファクタリング会社は貸金業登録をしていますでしょうか。貸金業登録もせずに貸金業を営んでいたということになると、金融庁に取り締まって頂かないといけません。闇金だということで、警察も動いてくれるでしょう。
また、「貸金」であれば、利息制限法(上限金利原則15%)を守ってもらう必要がありますが、あなたのファクタリング会社は利息制限法(上限金利原則15%)を遵守していますでしょうか。この15%は月15%ではなく年15%です。まさかあなたのファクタリング会社は、月15%やそれ以上もの暴利を貪っていたりしないでしょうか。
東京弁護士会も二社間ファクタリングは全面的に違法との意見を提示!
上記の真正売買の議論には踏み込んでいませんが、東京弁護士会も、二社間ファクタリングは全面的に違法との意見を提示しました。
東京弁護士会では、2020年5月、偽装ファクタリング業者の規制を求める意見書(偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書)を作成し、金融庁や警察など関係機関に提出しています。東京弁護士会のHPから見ることができます。
これまではファクタリングのうち、①(リコース条項がある場合)の性質があるケースのみが貸金業だとする風潮がありましたが、②(債権譲渡通知が不要な場合)や③(回収業務委託契約がある場合)も違法なファクタリングであるとして、金融庁や警察などに取り締まりを強く促しており、二社間ファクタリングのほとんどのケースがこれに該当します。
このアプローチは、真正売買という法理論ではなく、実態が貸金業と酷似しているということを根拠にしているように思われます。
いずれにしろ、法理論上も実態上も、現在幅広く行われているファクタリングは、貸金業であり、無登録貸金業として違法であるという根拠が整利つつあるということかと思われます。
ですので、今後、ファクタリングは全面的に違法と判断される方向にあるのではないかと思われます。
ファクタリング会社対応に関する注意点
※ また、ファクタリング会社の中にも正常な業者も存在することから、必ずしも、過払い金返還請求することができない可能性があること、当事務所が過払い金返還請求できることを保証するものではないことにはご留意ください。
また、ファクタリング会社対応は、一般のクレサラ案件やヤミ金案件とは対応方法が全く異なります。近時、ファクタリング案件も、一般のクレサラ案件やヤミ金案件と同様、簡単に解決できるかと勘違いし、過剰な要求をされるファクタリングの被害者の皆様も僅かながら存在しますが、ファクタリング案件は、一般のクレサラ案件やヤミ金案件のように、単純な対応方法では対処できないこと、対応方法に多種多様な検討が必要であることにご留意ください。